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蒼月帖 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-01-24

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 昔の仲間から召集メールが入った。私たちがものすごくお世話になった師匠ともいうべきKさんが京都に来られるので、急遽集まることになったという。指定された店に行ってみると、突然の話だったにもかかわらず、京阪神一円から結構な人数が集まっていた。

 社会に出たばかりで右も左もわからなかった頃、私たちは仕事のおもしろさと厳しさをKさんから教わった。一旦仕事に入ったら深夜だろうが徹夜だろうがお構いなし、その代わり遊ぶ時はみんなを引き連れて徹底的に遊ぶ、ぶっきらぼうで厳しく叱る反面いざという時は身を挺して守ってくれる、そんなKさんの人柄に惹かれた私たちは、「この人のためなら」という気持ちをいつも奮い立たせていた。

 Kさんはその後、関東責任ある大きな仕事に就き、Kさんの元で鍛えられ実力をつけた仲間たちは国内外に散らばっていった。私は私で、Kさんのチームが解散したのを機に職を変え、新しい道へと踏み出した。

 あれから何年も経ち、すでに管理する立場にある人間も多いのに、ああやって集まってみるとみな根っこは職人気質研究者のままだった。しかもKさんの前に出ると誰もが青二才で、昔と変わらないはにかんだ表情を見せる。酔って昔話に花を咲かせる彼らを前に、私は泣きたくなるような感情の中で揺らいでいた。

 あの頃の経験や思い出を大切な珠のように心の中で温めていたのは、私だけではなかった。それぞれが小さな珠を胸に、その後の様々な局面を乗り切ってきたのだ。泣いたり笑ったり怒ったり喜んだりして身につけたのは、単に仕事上での技術キャリアだけではない。Kさんが身を持って私たちに示してくれた垢抜けない義理人情とも言うべきものは、それから後の私たちをずっと支え続けてくれていた。

 その日は夜中まで飲み歩き、いい大人が声を嗄らしてしゃべりまくった。翌日は宿酔と寝不足で散々な体調だったけれど、気持ちは何百グラムか軽くなり、心の中の珠はひと回り大きくなっていた。