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2008-03-09勿体無い revised

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 先日。ラジオを聴いていたら、「『MOTTAINAI』(もったいない)を体感しよう」ツアーのことが話題にされていました。「MOTTAINAI」を提唱した環境保護活動家ワンガリ・マータイさんのご出身地を訪ねて植林活動等々に参加するみたいなんですけどね。ツアー料金が40万円とか? 思わず、「MOTTAINAI!」と(心の中で)叫びそうになった自分が恥ずかしいです。




 さて。

 あるイタリア人音楽家が、秋川雅史さんや新垣勉さんによる歌唱で有名な「千の風になって」をイタリア語に訳した歌詞で録音をしたらしい。その楽曲を含む CD が発売されたのだが、作曲者および日本語詞の作者である新井満氏からのクレームにより、回収となったそうだ。通販サイトのいくつかを調べてみると、確かに該当作品が「取扱終了」となっている。

 この事実と新井満さんからのクレームがあったらしいという噂から私が勝手に感じとったのは、「千の風になって」という歌は、日本語で歌われるのがもっとも相応しいのだ、自分の訳詩で歌われることがもっとも相応しいのだ、という新井満さんの作者として自信だった。


 ディープ・パープルレッド・ツェッペリン等の楽曲を日本語直訳詞で歌唱し話題となった『王様』というミュージシャン。様々な「直訳ロック」作品を発表してきた彼が、長年の念願であったビートルズの楽曲で挑戦しようとしたところ、ビートルズの楽曲を他の言語で歌うことは認められない、と訳詞の使用許可が下りなかったという。しかし、それでもあきらめきれなかった王様は、「それならば、ビートルズがカバーした曲のカバーを……」と、「ひねってワオ!」(〈Twist & Shout〉)、「お願い郵便屋さん」(〈Please, Mr. Postman〉)、「君に首ったけ」(〈You Really Got Hold on Me〉)、「月光おじさん」(〈Mr. Moonlight〉)、「長身サリー」(〈Long Tall Sally〉)等々、ビートルズがカバーした楽曲を直訳カバーしたアルバムを制作した。聴いてみた印象は……、やはりビートルズのほうが良いな、と。当たり前であるが。演奏云々とかアーティスト性とかアレンジとか、そういうことでなく、やはり、詞、である。歌詞が日本語であるというだけで、まるで冗談みたいに聴こえてしまうのだ。自分の国の言葉なのに。変なオカシさがこみ上げてしまう。もっとも、王様の狙い、王様のアーティストとしての存在意義はそこなのだと思うが。

 もし、王様の申し出が許可されていたら。そして、それらの楽曲を聴いたら、どんな風に感じたのだろう?


 もうひとつ。ちょっと前に THE KINKS(ザ・キンクス)という「英国四大ロックバンドのひとつ」、にしては、ビートルズローリング・ストーンズと比べるといまいち、ここ日本における知名度や評価の低いバンドの、日本人アーティストによる所謂「トリビュート・アルバム」が発表された。この作品の発売記念イベントを観に行ったときのことだ。その中で、〈Lola〉という楽曲をカバーしているアーティストがいうには、当初は日本語に訳した詞で歌うつもりでいたそうで、すっかりその気で、詞ももう書き上げていたとか。しかし、作者であり、そのバンドのボーカリストであり、フロントマンでもある Ray Davies(レイ・デイヴィス)に許可を得ようとしたところ、それはだめだとあっさり断られたらしい。「口惜しいから、今日、演奏します」と、日本語による〈Lola〉を聴かせてくれたのだが、やはり、本場の〈Lola〉を聴き込んだ耳には、新しさは感じとれるものの、違和感ばかりが気になる結果となってしまった。まるで、まったく別の歌をうたっているのを聴いているような気持ちになってしまった。

 許可を下さなかったレイ・デイヴィスは、きっと、正しかったのだろう。




 歌詞もメロディーの一部である。と常々思う。メロディーと、歌詞による響きと、演奏とが一体となって、一つの作品となる。

 他国の言語に変えることでそのメロディーは違った響きを持ってしまう。その響きもよしとするかは作者の判断に委ねられる。もし、自分が同じ立場であったら? どうするだろう。他国語で歌われるということは、それだけその曲がひろく認められたということに他ならない。他の国でも自分の歌がうたい継がれることになるのだ。それでも、やはり、それを拒むには、自作品への相当な自信と、覚悟がいるのではないか。




 もったいない(勿体無い)とは、仏教用語の「物体(もったい)」を否定する語で、物の本来あるべき姿がなくなるのを惜しみ、嘆く気持ちを表している。

Wikipedia - もったいない より






 本来あるべきはずの姿を惜しむこころ。あるべき姿を主張できる強さ。自信。そういったものを持ちたいものだ。あるいは、そういったこころに触れたい。――それらが自分にないならば。




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- a kind of serial novel -

[“FOR GET”(フォー・ゲット)]

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