bluescatの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-03-18Japon, mon amour / ラブユー日本 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 3月11日、金曜日。

 一週間分の疲れをため込んだ けだるさと、明日からの休日を心待ちにして、少し気持ちがはやるような、いつもの午後の時間が流れていた。そんな、春を目前にした、気持ちの良い午後の空気を破るように、最初はゆっくり、やがて、冗談だと笑っていられないほど大きな揺れに襲われたのである。今でも夢のような気がする。

 机の下にもぐって、怖ろしいほどの揺れを、四つんばいの恰好でじっと受け入れた。普段あまり会話することのない派遣社員の男性とはっと目が合った。もしかすると、目と目を交わすのはこの人で最後かもしれない、という気になって、視線をほどくことができなかった。きっと男性もそう思ったのであろうか、私たちはお互いに無言で見つめ合った。

 激しい揺れの中、斜め向かいの女性が、机の上に手を伸ばして携帯電話を探っているのが分かった。無意識に、万が一の際に必要となるであろう物に手を伸ばしているのだろう、たくましい気もし、少し、ものがなしい気にもなった。

 一度目の揺れが収まったとき、部署のリーダーの女性の元に皆で集まった。いつも気丈で弱音など吐いたことのないかたが、私の気のせいかもしれないが、その瞳がきらりと光っていたような気がした。たしかに、怖かった。

 きっと一瞬、誰もが何かの覚悟をしていたのではないか。

 午後6時に帰宅命令が出され、同じ方向の者同士で歩いて帰宅することになった。実は健康維持の為、会社からよく歩いて帰宅することのある私にとってはどうということはないが、普段歩き慣れていない女性、しかも、ヒールのある革靴では しんどかろうと思われた。突然の、思わぬ出来事に半ば呆然としながら、皆、黙って歩き続けていた。

 シブヤに着いたのは、7時。急いで帰っても仕方がないということで、何人かで食事をして帰ることにした。これから立ち上げる予定の新サービスについて熱く語り合った。

 午後9時。皆と別れ、さて、歩いて帰るか、と気持ちを引き締めて歩き出したとき、サラリーマンの男性にナンパされた。帰れなくなってしまった人なのであろうか、呑みに行こうよ、と。無視して行き過ぎようとするが、しつこく誘ってくる。少し、恐怖である。こんな東京の ど真ん中なのに。これが災害というものなのか。

 そんな震災1日目。





 東北地方に比べれば、まだ被害が少ないのだろうか、だが、報道を見る限り被災地のひとつと言ってよいであろう、茨城県の実家の家族とはずっと電話が繋がらなかった。

 翌日遅くにやっとメールで無事を確認できた。どうやら家族も実家も無事で、電気、ガスは通っており、水道だけが不通だという。水道だけ、というが水が出ないということがどれほど不便なことか。年老いた母のことが気にかかった。

 震災後三日目にやっと繋がった電話では、励まし、元気づけなければいけないと思った母に、逆に心配された。いまだに独り者で、世知辛い(というイメージの)東京で一人暮らししているから、さぞかし心細いと思ったのか。「こちらではみんなが助けてくれるが、貴女は一人なんだから」と。大変な状況であろうはずなのに、遠くはなれた我が子を気遣う母の声は、あたたかく、力強かった。私の心配など、笑ってしまうようなものである。母の偉大さを思い知った。もちろん、私が泣いたということは、どうか内密に。





 スーパーから、コンビニエンスストアから、食パンが消えた。乾電池が、ろうそくが、トイレットペーパーが。

 だが、パン屋に行けば、食パンがいつものように売られているという事実。

 友人の情報によると、某外資系大手CDショップには乾電池がたくさん置いてあったという。

 買い占めについて問題視されているようであるが、もし、自分に子どもや養わなくてならない家族がいたら、どうしていただろうかと考える。こんなとき、まず、守るべきは自分と家族。それ以外の人のことは二の次になってしまうのではないか?と。むろん、買い溜めにも程度があるが。冷静さを欠いた時、自分だけは絶対にそんなことはしない、と言い切れるだろうか?と。――わからない、その時になってみないと。自分と同じ立場ではない人がおかしてしまったことを責めるのはやめようか。

 不安もあるが、その分、気楽でもある独り者なので、ひとまず、食パンがなくても生きていける。乾電池は家にストックがあるし。ろうそくは、アロマキャンドルだけど、いくつかあるし。トイレットペーパーは、ストックがなくなったらウォシュレットでなんとかなるかな?と。文句を言う家族はいないので、どうにでもなるものである。

 この異常な状況の中で、どれだけ冷静に自分を保てるか。必要な情報と不要な情報を切り分ける為、極力、テレビは観ないことにした。インターネットも、今の自分に必要な情報だけを見て、すぐに遮断することにした。

 会社からは自宅待機指示が出、今週一週間は自宅でゆったり、気持ちを落ち着けた。





 会社の女の子で宮城県出身の子がいる。どうやらご家族は無事だった模様。ほっとする。

 義援金への協力をお願いされた。

 ぶっちゃけ、お金が一番うれしいのであろう。今まさに必要なのは、一個の握り飯であったり、一枚の毛布かもしれないが、この先ずっと続くであろう避難生活に本当に必要なものは、何よりも、お金なのかもしれない。

 阪神大震災の爪あとはいまだ癒えていないと聞く。いまだに仮設住宅に住まれているかたがいると。

 ヒーローになる必要はない、という。皆の善意だったり、時には偽善だったりするかもしれないものの、集大成としてお金が、どれほど必要となるのだろうか?






 BGM:

 Jay-z, Bono, The Edge & Rihanna - ‘Stranded (Haiti, mon amour)’


 ハイチ大震災支援の為に発表された楽曲。ハイチへのメッセージであるが、なぜか、先日の震災以来、聴いている。

 聞き取りなので、不正確かと思うが、歌詞の



  Haiti, ami amour

  Haiti, mon amour

  not gonna leave you stranded

  我が友、ハイチ、

  愛するハイチ、

  君たちを一人取り残したりはしない



 という部分に深く勇気づけられた。

 我が愛する日本を、東京を、茨城を、東北を、見捨てはしまい。

トラックバック - http://c-u.g.hatena.ne.jp/bluescat/20110318