bluescatの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-05-28I LOVE ME / ずっとウソだった

 なんとなくふっと思い出したのですが。

 シンガーの斉藤和義さんの作品で『I LOVE ME』(正式表記は『I (ハートマーク) ME』)というアルバムがあります。四年前くらいの作品だったでしょうか。

 よくよく考えてみると、結構すごいタイトルだなあ、と思って、個人的に(失礼ながら)ウケてしまって。友人(というかその時付き合っていた人)に、

「アイ・ラヴ・ミーって、すごいよね~」なんて、おちゃらけて云ったところ、その人も笑っていましたが、ちょっと真面目な貌(かお)で、

「まあ、音楽やってるやつなんて、大概(たいがい)みんなアイ・ラヴ・ミーだけどな」

 なんて云っていたものでした。

 その時は、ふうん、そうなんだあ、くらいに思っただけでしたが。



 その人も音楽をやっている人でした。

 どちらかというと、I LOVE THEM, I LOVE ALL な人で、非常に人当たりがよく、LOVE & PEACE な雰囲気をもっていたので、みんなの人気者でした。

 けれども、やはり、音楽をやっている人、ギターの弾き語りというミニマルな手段で世の中に向かって自己を表現している人ですから、やはり、I LOVE ME な部分が人一倍あったのかもしれません。

 音楽が好きで、じぶんが好きで、じぶんの歌が好きで、じぶんの歌を聴いてもらいたくて。

 でも、I LOVE ME というのは、はずかしくて。

 もしかすると、そんな照れ隠しに、おれはロックだ、ロックが好きなんだ!と云っていたけれど、本当は I LOVE ME と叫んでみたかったのかも。それをあっさりと云ってのける斉藤和義さんのことをほんの少しうらやましいと思ったのかも、などと想像したりしました。





 その当時、斉藤和義さんに関わるお仕事をさせていただいたことがありました。といっても、アルバムのプロモーションのお手伝いをさせていただいただけで、実際に斉藤和義さんにお会いしたりとかはなかったです。

 斉藤和義さんは、スタッフの皆さんから「和義さん」と名前で呼ばれ(あるいは「せっちゃん」という愛称で呼ばれ)、慕われているという印象を持ちました。きっと、非常にいい関係を築きながら、いい環境で音楽活動されているのだろう、と。

 その前後から、「ウェディング・ソング」、「やぁ無情」、「おつかれさまの国」、「ずっと好きだった」、などのヒット曲を立て続けにリリースしていたことでも、それは分かりました。

 1994年の「歩いて帰ろう」のヒット以降、(一部の人たちからは支持されていたものの)第一線からは遠のいているという印象がありましたが、ここ数年はCMタイアップなども多く、一部のファンや音楽好きだけでなく、広く世の中にアピールできるアーティストとして還り咲いたのだな、と思っていました。




 震災から一ヶ月が経とうとしていた、四月のある日。ネットのニュースで、斉藤和義さんのヒット曲「ずっと好きだった」の替え歌の「ずっとウソだった」という曲が動画サイトで話題になっているということを知りました。

 ご本人による歌唱とのことで。

 原発の安全性を謳い続けていた政府や電力会社への痛烈な批判の歌でした。




 音楽業界の末端にいる私でも、それがどんなに危険な行為か、分かります。原発批判をすれば、非常に多くの敵をつくることになります。CMタイアップから外されたり、テレビ出演をキャンセルされたり、コンサートホールを貸してもらえなくなったり、最悪、レコード会社から干されることだってありえます。ミュージシャンにとって致命的な状況に陥る危険性があることは目に見えています。

 それでも、「ずっとウソだった」と歌ったのはなぜなのでしょう? 動画サイトへアップしたのはなぜなのでしょう?




 I LOVE ME な人、じぶん大好きな人、じぶんかわいい人であれば、そんな危険を冒さなくても良いのに。

 それでも歌わずにはいられなかったのは、やっぱり、本当に、正真正銘の I LOVE ME だからこそなのかな、と思いました。



 痛烈な批判ソング、として話題になっていましたが、何よりも伝えたかったのは、「ずっとウソをつかれていたこと」に対する怒り、そして、「騙されていたんだ」という、半ばあきらめの気持ちだったのではないかと思うのです。

 "大好きな" じぶんと、じぶんが愛する人、じぶんを取り囲む人たち、環境を脅かそうとする存在を摘発すること、隠ぺいされてきた事実を指摘すること、それがじぶんなりの I LOVE ME であり、ミュージシャンとしてのじぶんがなすべきことだと思ったのではないか、と。

 危険を冒してでも歌わずにはいられない、じぶんが歌わなくてはいけない、と。



 アルバムタイトルに I LOVE ME とつけられちゃう人。危険を冒しても「ずっとウソだったんだぜ!」と歌っちゃえる人。

 じぶんも思っているけれど云えないようなことを云えちゃう人。代弁してくれる人。

 もしかすると、そこが斉藤和義さんの魅力であり、スタッフやファンから慕われる秘密なのでしょうか。

 皆、それぞれ、I LOVE ME で。原発反対派も、推進派も、みんな I LOVE ME で。守りたい領域、守るべき聖域があって。日々のいろんなニュースにもまれながら、それぞれの生活があって。

 

 "愛するじぶんの為に" 体を張ってでもやるべきことについて考えながら、"和義さん" の歌を聴いてみようかな、なんて。

 そんなことを思った、春のある日でした。

ゲスト



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