2009-12-28

そのかわり目にするものすべてに私を見つけては暮れた季節たち。子どもたちの垢にまみれたプールのぬるい水、踏みつけにされた枯葉の湿った音、識者によってかんたんに解説される化石、ぶら下がったまま腐敗する首の如き無花果、排気ガスに汚された残雪のひとかたまり。
太腿を見せつけ髪を盛った若い女たちがおでんを買うのだ。数年後に彼女はゲーマーの夫と礼音・乃亜と名づけた2人の子どもたちにコンビニのダシを水1リットルあたり一袋入れたおでんを作るだろう。伊達巻のかわりにロールケーキを重箱に詰めて正月を祝うのだろう。
夫に先立たれゴミ屋敷に住み一切を聞き入れず悪臭と騒音を撒き散らす老婆になるだろう近未来のために生きる路、その道端を一匹の猫が通りすぎる、びっこをひいた猫が。
ホースの先を指でつぶし、賞賛されるだれかの視点にむけて生臭い唾をまきちらす夢のあとで身体が樹齢三百年の杉になっていた。下半身に苔が生えていた。
2009-09-26

眠気に襲われる。抗えない。最初の子を妊娠したときの悪阻を思い出す。ひたすら怠く、身体が重く、頭の中が溶ける。ベッドに倒れ込むしかない。横たわって一瞬で墜落する。気絶、と言っていい。
あの時は憑かれたようにソーダアイスを食べていた。それからスーパーの惣菜のケチャップまみれのナポリタン。白衣を着ている私が朝礼のたびに倒れるのはなんとも都合が悪かった。隠していられなくなって、とうとう上司に白状した。はい、あの、結婚の予定はあります。
眠い眠い眠い、なにも頭に入らない、つらい。このまま鬱になってしまうんじゃないか。起き抜けに漠然とした不安に覆われながら、水を飲む。のどがカラカラに乾いている。手足が浮腫んでいる。鏡から目を逸らす。胃が痛む。嘔吐がそこまでやって来ている。
生活から逃げられない。逃げられないなら眠るしかない。眠るしか。
2009-09-16

硯しか入っていない習字セットと、昨夜「どこへいったかわからない」と言っていた算数の本とノート、なぜか泥だらけの壊れた定規を持って学校から帰ってきた朝8時半。漢字ドリルは少年が書き込んだ箇所から20ページも進んでいた。授業中に立ち歩き掃除をせず忘れ物だらけなのに一向に気にせず時間もルールも守らない。担任から連絡がきた。
本日、少年は自宅にて謹慎。なんという秋晴れの今日。国語の教科書はまだ見つからない。ノートがないと言うが、本棚に新品が3冊もあり、2,3ページ使ったきり放りだしたノートも3冊あった。
長所なら誰もがわかっている。少年は友人からも女からも好かれている。しかし許されているからといってクラスの授業に支障をきたしていいわけがない。4年1組の女教師は最後にこう仰った。どうか○○君を褒めてやって下さい、抱きしめてあげて下さい。
先生。あの子に必要なのは母性じゃありません。抱きしめるのは母親ひとりで充分だと私は思います。しかし女が男に規律を教えることはできないのです。絶対に。規律を与えるべき父権が欠如していたのです。