2006-11-02はじかきサスデー

■ [しいゆう]クサイのとか

id:PacoGarciaの新編集長就任エントリィ『席が替われば当代です』をキッカケに、ちょっと。
他人様の文章には何だかんだとツッコミ入れますが、私自身はC-U作品に正面切ってツッコまれたことがないわけで。
さてそんな私、ネット上の読み物を両手で顔を覆って指の隙間から盗み見るみたいな感じで「読めねー!クサくて読めねー!」とジタバタ悶絶することがあります。詩(だと本人が思って書いている)のブログを目にした時なんかは無言で閉じ。本屋の立ち読みで臭ビームを受けることもあるし、ドラマでやられることも多いですね。
で、その『クサイ』ですが。
特にハードボイルドや恋愛モノを書いている本人には気づきにくいものじゃないでしょうか。会話部分なんかには顕著に出るような。男性が書く女性のしぐさや濡れ場、或いは女性が書く勘違い男性像などにも「ないないない!」「…言わねーよ!」とか心で叫んだことないですか?
私自身がC-Uで書いているものはテーマも作風も乾いたタッチのものが多いのであまり思われないだけであって、ブログなんかではどっかで「くっせぇくっせぇ」言われてるかもしれないし、また逆に私が「くさっ!」と思ったものを他の人が読んでも全くクサくなんかないのかもしれない。
…というところでPacoさんをサンプルにするのも非常にアレなんですが(…す、すまん。)今回は御本人が『この臭さがワタクシなのであって』と申告されたのをいいことに(!)、同じ設定で自分が書いてみたらどうなるのか?と思ったので試しにやってみました。
PacoGarcia様の原文
かすかな気配を感じたオレはグラスのジャックを一息であおった。 背後に立つ男が誰なのかは振り向かなくてもわかる。 空気の色が変わるのだ。いつもそうだった。 「ジャックか。相変わらず軟弱な酒を飲んでやがる」 囁くような声には不思議な深みがあった。 「繊細な酒と言って欲しいですね」 振り向かずに応える。 男が噛み殺すような嗤い声を上げた。 2杯目のジャックがかすかに揺れている。オレはその琥珀の奥を見つめ何かを探していた。恐らく逃げ道だったのだろう……と思う。 「お前にこれが飲めるか?」 ストゥールを一つ隔てて座った男が呟くように言う。男の前にはいつの間にかI.W.HARPER 101 のボトルがあった。 「どういう意味です?」 「これは男の酒だ」 「だから?」 「飲み手を選ぶってことだ。ジャックのように馴れ合わない。そういうことだ」 男が人差し指を立てると、バーテンがストレートグラスをカウンターに置いた。 「飲むか?」 「いらねえや。そんな難しい酒」 「くっくっく。飲むさ、お前は。きっとな」 男は秘めやかに嗤うと、101を満たしたグラスを鮮やかな手つきでオレの前に滑らせた。 「だからいらねぇって言ったでしょうが」 オレはガキのようにイラついた。 「仕方ねぇだろ。飲み手を選ぶ酒ったって、注がれちまえば目の前の人間が飲むしかねぇんだよ。それがどれほど熱かったとしてもな」 「オレに何を期待してんです?」 「さあな」 「メンバーだって気ぃ遣ってるのはわかってるんです」 「だろうな」 「何もできませんよ、オレ」 「わかってる。だが呑むしかねぇんだよ。胆をくくれ」 「50.5度をですか?」 「ああ。こいつぁゴツイぞ。だが目ぇつぶって呑んじまいな。喉もと過ぎれば何とやら、ってやつだ」 オレはきつく目を瞑りグラスを引き寄せた。 Contemporary Unit 50.5℃……火の酒だ。燻り続ける野火の香り。人を怯ませる匂いだ。 「呑みますよ、南無さん」 「呑め。Paco Garcia」 オレは大きく息を吸い込み、目を瞑ったままグラスをあおった。 慟哭と絶望と混沌と狂気と哀しみと……そして希望の味がオレの喉を滑り落ちていった。
私ば~じょん
気配を感じた俺は琥珀の酒を一息で飲み干した。あの男だ。 「ジャックか。」 背後で男が呟いた。囁くような声だが深みがある。カウンターの端まで聞こえているに違いない。澱みのない重低音で話す男というのは確かにいて、その種の声で放たれた言葉は何であれ、迷いのある人間の足元を揺さぶってくる。俺は奥歯を噛みしめ、振り向きもせず言い訳のように2杯目のジャックを注いだ。ストゥールを一つ隔てて男が座ると店の空気が一変した。バーテンダーが無言で“I.W.HARPER 101 Proof”のボトルとストレートグラスを置く。 男はゆっくりとした動作でボトルを手に取った。 「こいつは飲み手を選ぶ」 俺は男を見た。左の口角を上げてかすかに笑っている。男は厚みのある手でグラスを引き寄せた。 「酒に選ばれるなんて冗談じゃねえ。だろ?」 そう言いながらジャックを追いやり、“101”をそっと置いた。俺は怯んだ。男が真っ直ぐに俺を見据えている。俺は大きく息を吐き、目を閉じて一気にあおった。喉を、火が、滑り落ちてゆく。50.5度の酒が身体中を駆け巡るのを確認し、目を開けた。 あの男は消えていた。
!!!わかんねー!!!
自分がクサイんかどうなんかよおわからんようになってきた ( ゚∀゚)
トラックバック - http://c-u.g.hatena.ne.jp/h_cat/20061102
しかし、ハード・ボイルド風味がちゃんとあるねぇ。
南無の人間像が微妙に違うところが面白い。
映画の脚本に置き換えると興味の尽きないところですね。それぞれの脚本で映画を作るとどれほどの違いが出るのか、とか。監督の手にかかるとどう映像化されるのか、とか。考えさせられるね。
コンポラGだと遊べていいですなぁ。南無さんも、おひとつ、いかがでしょうか。さすがに南無さんには「くっせー!」なんて言いたくないですよね誰も!つか言わせませんよね!「だいてっ!」とか思わせてくれますよね!
> PacoGarcia
グラスで試したの?実証主義者なのかネン(汗
今回は、そもそも何を書くかを想定する時点でスタイルが方向性を持つということにあらためて気づいた、というか身を以て知りました。