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敵も愚民である

-愚民唯我独尊ごろくより-
 

2006-11-04

namgen20061104

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 「ハードボイルドな文体」と書いてあって、いつのまにかみんなで遊んでいて私も参加しなくてはならない情勢になっていた。これもスタイルの範疇であることを考え苦手意識を度外視してイソギバタラキをすることにした。

もとのシーンは「席が替われば当代です」である。そして参加した者たちは現在「クサイのとか」「俺風味」「 ハードぼいるど・猫家の臭い」であり、たぶんまだ参加するものはいるだろう。

ということで、5番手です。

『パコ・ガルシアの首』

 エルサルバドルのメトロポリターナと違い、この極東のはずれにある都市は地図で想像してたよりもはるかに大きかった。ビルが密集していて夜でも毒々しいネオンがあちこちで輝き腹立たしく思えるほどであった。

 ナムゲレツ・ゲドーナの黒いスエードで覆われた長身は夜の歌舞伎町の雑踏をかき分けていた。そしてバトル・フィールドでないこの平和ボケした極東の地にいる自分の身を呪っていた。行き交う平坦な顔をしたハポネッサ達を横目で見ながら口の中でプータ!と毒づくこともゲドーナは決して忘れなかった。仕事が終われば俺の大きいコックををたっぷり食らわせてやる、と。「戦場の外道」と勇名を馳せた情け無用の下劣さも戦乱の終わった国にとってもう必要とされなかった。ゲドーナの時代は終わり、やがて彼の名前も人々の記憶から忘れ去られるだろう。また歴史とはそうやって繰り返されるのだ。

 しばらくしてゲドーナは大きな劇場の裏通りに建っている飲食店ビルにある地下入口を前にして立っていた。レストラン・リオフリオと書いてある白色のネオン看板を確かめると一気に階段を駆け下りていった。ドアの前で一瞬左胸に下げている銃の安全装置を外す事だけは忘れなかった。

 ドアを開けると店内の空気が一変し、その髭面の男の醸し出すただならぬ気配に座っていた数人の客全てが視線をはずすのを感じられた。情報に間違いがなければ売春宿のサム・ペキンパー親父がつけた懸賞首通称「乗り逃げのパコ」ことパコ・ガルシアはこの店のカウンターに座っているはずだった。

ゲドーナはゆっくりと店内を見渡し、やがてある男の背に立った。

「オーラ!アミーゴ。コモ エスタス?」

 ゲドーナは男にだけ聞こえるようにかすれて低い声で呟いた。ぴくりと男の肩が動いたような気もしたが店内に流れているオルケスタデラルスが刻むサルサの音でかき消されたのか無言のままであった。ゲドーナはふん!と鼻白むとガルシアの右横のストールに腰掛けガルシアの前に置かれたジャック・ダニエルのボトルを見た。コートの中で指は既に銃の引き金にかかりいつでも撃てるようになっていた。さっさと代金の代わりに命を貰えばいいだけの簡単な仕事ではないか。ましてこの東洋の島はゲドーナの肌に合うとは言えなかった。大概がどいつもこいつも生きているような顔をしているわけでもなく軟弱さを漂わせその平坦な顔ゆえ無表情にしか見えなかった。「まったくのところ、乗り逃げ野郎にはピッタリの国だぜ」とゲドーナは心の中でガルシアを罵っていた。ゲドーナは早く仕事を終えたかった。

「バーボン・ウイスキ。シエント ウーノ」

 ゲドーナはカウンターの前に立っているヒラメ顔のバーテンに左人差し指を立てI.W.HARPER 101 を注文した。そしてバーテンがボトル棚に振り向き背を見せた瞬間躊躇なく引き金を引いた。

「アディオース、アミーゴ!」

 その言葉が言い終わらないうちに重い鈍痛が体を貫きナムゲレツ・ゲドーナの体がまるでスローモーションのようにストールから床下に崩れ落ちていった。ゲドーナの頭の中では撃たれたことに気づくまで何秒間の空白があり、それがいったい何を意味するのかが判然としていないような表情を冷静な目で見下ろしているガルシアに見せていた。ゲドーナは何度か咳をしながら自分の脇腹からどくどくとした熱いものが噴出してくるのを感じていた。

「な、アミーゴ、どうして俺より早く撃てたんだい?」

「ははは。アミーゴ、おれが子供の頃から背中でも平気で撃つというその下劣さでお前が有名だったからさ。それにバーボンを注文したときに右の利き腕を使わなかったじゃないか。おれのような早撃ちを日本では脊髄反射って言うんだよ」

「セ・キ・ズ・イ・ハ・ン・シ・ャ・・?」

 ナムゲレツ・ゲドーナは意識の薄れていく中でもう既に白くなった髭に縁取られた口をただパクパクとさせていただけであった。

   -了-

PacoGarciaPacoGarcia2006/11/05 07:40下劣外道な様>く、くるしい。腹がいてー。しっかし思いっきり肩の力を抜いて書きましたね。(笑)タイトルですでにやられました。ペキンパー風味。お見事です。

BOBOBOBOBOBO2006/11/05 10:57サムペキンパー監督「ガルシアの首」意味がわかる自分に危機感を憶えました。(笑)

ターニング・ポイントはDEATHノート観に行くsushibarさんあたりかな?

namgennamgen2006/11/05 11:36編集しながらやはり下手だなぁ、と思った次第です。ま、下劣さに免じて許しを請うしかない。スペイン語はその他のヨーロッパ言語にもあるように性によっての区分けがあるということを今更ながらに知ったのだけど、そんなにもややこしい言語を操れる編集長が羨ましいです。そういえばid:agricoも南米に居たんだったな。グローバルなところがこのグループの強みということで。。。
でもラチィノはラム系でなかったっけ?強いアルコールには代わりが無いけど、酒のシーンで悩んじゃったよ。

agricoagrico2006/11/05 18:05南無さんがスペイン語に堪能なことに危機感を感じました。これからはそれとなく外国語で悪口が言えないということですね。
さすがの南無下劣氏も脊髄反射には勝てなかったのですね。こうして乗り逃げのぱこ・がるしあさんの時代になったと・・・
南米でもちょっときどった男はウイスキーを飲んだりしますよ。一般的な飲み屋とは別に「ウイスキー・ショップ」のような酒場もあります。高いのでお金がないと入れません。

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