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2007-02-11-Sun 鉛筆で描く肌

[] 風呂場にて「漁師の昔語り」 01:48  風呂場にて「漁師の昔語り」 - 風呂場猫のハタ織り を含むブックマーク はてなブックマーク -  風呂場にて「漁師の昔語り」 - 風呂場猫のハタ織り  風呂場にて「漁師の昔語り」 - 風呂場猫のハタ織り のブックマークコメント


 まるで魂が抜けたみたいな目つきじゃった。

「死ぬつもりで飛び込んだ。だのに水が冷たくて暗くて怖くなって夢中で泳いでしまっていた」

そういってあとは黙って焚き火にあたっとった。番屋に駐在がくるまでぼんやりと火の粉を見とった。ほじゃけど、なあ。あんなきれいなおなごはみたことがなかったのぅ。

 その頃はまだ手漕ぎの船に乗って漁に出よった。旦那が櫓を漕いでウチが漁場を探す。海のことはなんでも知っとらいな。なにしろ二人とも八つ九つから船に乗っとったけんな。その朝は浅海(あさなみ)から波妻(はづま)の沖に二里ほど出て白海老を穫ろぉと思とった。朝ゆうてもまだ暗かった。そりゃあ今ぐらいの気候のこっちゃ。冷やかったよ、海も風も。それでも昔はたんと海老がおったがな。ああもう穫れた穫れた。面白いぐらい網にかかった。かご一杯を市場にもっていったら何銭になろかのぅと船の上で大笑いしもって算段しよったことよ。

 そのときや。どぶんと音がしてたまげた。

人が落ちたぞ!旦那も大声だしてたまげとった。高浜向いていきよった大阪商船の甲板の上から人間が落ちたんよ。大阪商船ゆうたら豪華客船じゃがな。船の横っちょらへんにぷかぷか頭が浮いとる。こりゃおおごとじゃ。助けないかん。はよねきまで行け、いうてあわてて櫓をこいだ。


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 仕事でお年寄りの入浴介助をしているとき、昔話を聴くことがある。

先日93歳のお婆さんの背中を流したときのこと。身体を洗ったあと椅子に載せ湯船に沈めると、私の手をぽんぽんと叩いて拍子をとりながら機嫌良く『閖上大漁節』を唄い、そのあとこんなふうに昔語りをはじめた。お婆さんはもと漁師だった。

「あんたの手は白くてもちもちしとって綺麗じゃのぅ。なんにも苦労を知らんお嬢さんの手じゃ。結構なことじゃ。ウチが娘の頃は、それこそ松笠みたいにささくれとった」

 お婆さんが若い頃、海に落ちた娘を助けたことがあるという。船から飛び降りたのは、あでやかな振り袖姿の娘だった。二月の冷たい海水を含んでずっしりと重たげな上等の着物。私の頭の中に鮮やかに絵が浮かんできてすごく興奮した。

 お婆さんの話をもとに、簡単な文をこしらえて絵を添えてみた。老人の語り口そのままに書くか、淡々と三人称の物語にするか迷った。とりあえず両方書いて比べてみたが、三人称のほうがいいような気がした。今日C-Uにアップしたが、あとで加筆修正もあるかと思う。

http://c-u.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=221


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 C-Uの自分のBOOKSに『肌暦』(はだごよみ)というカテゴリを新しく創ることにした。様々な風情の女の肌を四季折々の季節に絡めて描いてみたい。新しい試みをしてみようと思いついたのは、先日のブログ・バトル・ロワイヤルの課題に参加したことがきっかけだ。私は『睦月』という掌編をアップした。拙くて荒っぽい絵と文ではあるが、自分では気に入っている。実をいうとこうしたタッチの手の絵は以前から描いていたが人前に出すことはしていなかった。アップしてみて良かったと思う。カテゴリの最初に、この『睦月』の絵を置きたい。

 私は自分の中に在る生々しい『女』の部分を露に表現してみたい想いをずっと抱えていた。しかし思うように書けず迷っていた。恥じらう部分もあり随分ためらっていたと思う。今回、こういった匂いのものを思いきって書いて晒してみて、初めて自分らしいものができたという手応えを実感している。ただ、与えられたテーマについては、難しすぎて十分に咀嚼できていなかったという反省がある。作品にいただいた評は賛否両論だったが、自分なりに納得している。考えさせられる言葉もあり真摯に受け止めようと思った。なにより、いろんな方に正直な感想や批評をいただけたことがありがたいと思う。イベントに参加してくれた皆さんに心から感謝する。



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