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2007-06-09-Sat逢瀬

[] 瀬音 11:34  瀬音 - 風呂場猫のハタ織り を含むブックマーク はてなブックマーク -  瀬音 - 風呂場猫のハタ織り  瀬音 - 風呂場猫のハタ織り のブックマークコメント


河原の石は月明かりに洗われて足裏を冷やし

黒くぬめった小魚たちが踵をすり抜けていく

屋形船の灯が通り過ぎるのを待ってそろそろとゴザを敷く


白粉の染み付いた襤褸の上に横たわり脛の内側を月に晒すと

歯のない真っ暗な空洞に小ナマズが鰭を震わせ潜り込んできて

切られた舌の古い傷口をせわしなく突ついている



ヤニで汚れたシングルユースの壁や小窓に

テレビの点滅が蒼くゆらめいて映るのを眺めながら

骨だけの魚になって冷えてゆく自分を感じた

10年かけて醜く食い散らされた最後の肉片が水中を漂っている

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2007-01-14-Sun 〜罠〜 秘めはじめ

行灯

[] 秘めはじめ 21:13  秘めはじめ - 風呂場猫のハタ織り を含むブックマーク はてなブックマーク -  秘めはじめ - 風呂場猫のハタ織り  秘めはじめ - 風呂場猫のハタ織り のブックマークコメント

生身のお前がどんな女であっても驚かないつもりだった


誰にも言うもんか

誰にもおしえたくない

ほんものの淫乱顔を俺以外の誰にも晒すな



障子越しに日が暮れ仲居が挨拶を終えいそいそと襖を閉め

灯を消すのも忘れ抱きあいファスナーをすべる指もそぞろ

うなじ、腕、乳房、脇腹、背中、腰、尻、脹ら脛、指、踵

白い白い白い白いどこもかしこも白く淫靡な極上のトロ肉


ねぇいつも自分でしているようにしてみせて

自分の手で擦ってわたしに見せつけて


俺の上に腰をしずめつま先立ちで両膝を大きく拡げ

玄人女のようにこなれた腰使いで水音をみちみちと

喉をそらしのけぞりしなって柳眉を歪め髪振り乱し


どうしてほしいの聴こえない

もっと大きな声でおしえて


覚えたてのガキみたいに俺たちはなんども達して

畳で擦りむけた膝を露天の湯に浸しては閨に戻り

飽きもせず声を枯らし吠え続ける獣になりはてて


あああそれ大好きなのお尻大好き

突いてもっともっともっともっともっと


お前の濡れようは尋常でなく背中を反らし尻を突き出しうねらせ

恥知らずで淫らでみもふたもない言葉をひっきりなしに吐き出し

夜のどこかで怪鳥の雄叫びをきいた刹那お前は息をのみ潮を噴き

犬のように口を開け舌をなめずり涎を流し粘膜をひくつかせては


いいの素敵オモチャにして素敵

かけてかけてかけていっぱいなかにちょうだい


まったく、俺はどうしてこんな田舎の温泉街まで来てしまったんだろう。

浴衣に丹前で楚々とした風情取り戻した女の膝枕でまどろみ聴くは漱石。 

2007-01-08-Mon記念日

otama-neko20070108

[] 贈り物 17:35  贈り物 - 風呂場猫のハタ織り を含むブックマーク はてなブックマーク -  贈り物 - 風呂場猫のハタ織り  贈り物 - 風呂場猫のハタ織り のブックマークコメント


なんでもいいからこれで描いてほしい

きみの好きなように、文章や絵を


初めての逢瀬の記念に

あなたがわたしに選んでくれた贈り物は

イヤリングでもキーホルダーでもなく

パーカーの万年筆だった


文具売り場のショーケースの上の試し書きの黒インクの文字を眺めながら

瞳がうるんできて困った


日が暮れてやっとたどり着けたふたりきりの宿で

裸のままわたしは、疲れて眠りこけるあなたの横顔を描いた

骨格がしっかりと盛り上がった顔つきがライオンに似ている

そっくりに描けた、いとしくてたまらないひとの貌

目覚めたあなたは無邪気な子供のように喜びわたしを抱きしめてくれたけれど

後生だからそんな素敵な顔を他の女の前でしないでくださいと祈るばかりだった

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2007-01-02-Tue謹賀新年

otama-neko20070102

[] 初詣 23:54  初詣 - 風呂場猫のハタ織り を含むブックマーク はてなブックマーク -  初詣 - 風呂場猫のハタ織り  初詣 - 風呂場猫のハタ織り のブックマークコメント

昨夜、除夜の鐘を聴きながらあなたと身体を重ねていて、ふと違う人のような気がして不安になった。途中で薄目をあけて、本当にあなたなのかどうか確かめる。あなたでないわけはないのだけれど。

人間の細胞はある一定の期間で入れ替わるというから、あの頃毎夜のように慣れ親しんでいた頃のあなたとは全く別のひとになってしまったのかもしれない。

煙草を灰皿に押し付けるしぐさも、すこし乱暴な抱き方も、胸を流れる汗の模様も、冷蔵庫のあかりで水を飲み上下に動く喉ぼとけも、窓辺でカーテンの隙間から雨雲をにらむ横顔も、ゆったりと大股で歩く姿も、大好きだったあなたに違いないけれど、みればみるほど見知らぬ他人のような気がした。



雨の境内は人影もまばらで、冷えている。

傘をさしたあなたの腕によりかかっておみくじを開いた。

小吉

よくみるとなんだか間抜けな字面だ。

江戸時代の百姓の名前みたい。

『道ならぬ恋の誘惑に気をつけるべし』

誘惑に気をつけるような女だったら、今頃こんな思いを抱いていないはずだと、こっそり神様に毒づいた。

いっそ凶でもひけばよかった。

『天罰が下って、地獄の業火に焼かれます』とか。



傘をさしたあなたに寄り添って橋を歩いた。

黒い水に色とりどりの鯉が、舞うように流れていて、美しくてせつなくなる。



最近になって、私の胸のうちにも鮮やかな魚が放たれた。

活き活きと跳ねて、水音まで弾むようで。

魚は、輝きを失ってしまったあなたではなくてあのひとだ。

PacoGarciaPacoGarcia2007/01/03 22:55おめでとう。あんな長いのよー書けたなあ。神聖な場所へ迷い込んでしまった箇所ではゾクッとしたぜよ。期待してますから今年も頑張ってください。

ao_lazwardao_lazward2007/01/04 00:11体調を崩されていた中、作品を仕上げられたお玉さんには、本当に頭が下がりました。お疲れさまでした! おみくじは小吉くらいが良いのではないかと。小さく産んで大きく育てる、です(違
お玉さんの織り成す世界が、今年もとっても楽しみです。

otama-nekootama-neko2007/01/04 20:57>ぱこさんへ
今回、原稿用紙にして30枚以上の長さを目標にして書きましたが、やはり長いと持て余してしまってわたしには難しかったです。もっと練ったり寝かせたりする時間が必要だったなと思いましたが、これはこれでいい勉強になりました。次回に繋げてまた書いてみます。

otama-nekootama-neko2007/01/04 21:01>蒼さんへ
体調というよりも、やはり年末はみなさんそうだと思うのだけど仕事などが立て込んで忙しくてもう『もー勘弁してくれ!』って叫びたくなる日々でした。小さく産んで大きく育てる。いい言葉ですね。遠目には萌芽めいて見えるのだが、はたしてそうだろうかと疑問も抱くこの頃ですよ。

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2006-12-17-Sun声帯

otama-neko20061217

[] 声帯 11:12  声帯 - 風呂場猫のハタ織り を含むブックマーク はてなブックマーク -  声帯 - 風呂場猫のハタ織り  声帯 - 風呂場猫のハタ織り のブックマークコメント

『君の声が好きだ。たまらなく好きだ。

少しかすれてうわずって投げやりでなまめかしくて』



声の出る場所はどんなふうになっているのだろう。

いつか医学の本で見たことがあるあの器官。

二人向き合って座ったこのテーブルの上に

私の喉を取り出して眺めてみたい。


湿った筒状の粘膜をピンセットで開きながら、

入り組んだ形状のひとつひとつに、あなたが名前をつけてゆく。

恥知らずで、つややかで、秘密めいた名前。

言葉を失った私は唾を飲み込むこともできないまま

目を見開いてそれを受け入れるしかない。


あなたの声を聞きながら、頬が上気して色づいてゆくのがわかる。




Stronger Than Pride

Stronger Than Pride

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