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2007-01-09 (火)過去を掘る

文学

[] 帰郷 09:40  帰郷  - ことだまり を含むブックマーク はてなブックマーク -  帰郷  - ことだまり  帰郷  - ことだまり のブックマークコメント

f:id:puyop:20061113133434j:image

朝一番で、電車に飛び乗った。

時間があると、家族にいろいろ言われるのも気恥ずかしかったし、何より「友」には、見送られたくなかった。

おせっかいな奴の所為で、上京する日がすっかり知れ渡り、何人もの「友」から問い合わせがあった。

電車」を変えると言い出したのは、もう寝る寸前だった。


 まあ、元気でやんなさい、とニコニコしているばあちゃんに比べて、アレは持った?これはある?と、かあさんは忙しなかった。

 全く、遠足に行くんじゃないのに。


「ぢゃあね。行って来る。」

言い残して、僕は家を出た。

 目が潤んでいるのを見られるのが嫌で、一度も振り返らなかった。


 電車が、乗り継ぎの大きな駅のホームに入ったとき、僕は目を疑った。

 クラス連中が、みんなそこで待っていた。

「ヨースケ」がニカッと笑っていった。

「おめぇの考えとるこたぁ、お見通しぢゃぁ!」

「・・・ボクが、電車変えんかったら・・・どうする気やったとね。」

「決まっちょる!来るまで待っとうさ。」

その後、みんながわっと話しかけてきた。

案の定、僕は泣いてしまった。

・・・だから、嫌だったんだ。みんなが来るのは・・・。


・・・そして、何年かぶりに帰郷したその日、僕は行きつけだった「焼き鳥屋」の引き戸を開けた。

「おおっ!遅かぞ!」

「ヨースケ」が、あの時と同じ笑顔で、ニカッと笑った。

 すっかり頭は薄くなって、完全に親父になってしまったが、雰囲気はあの時のままだ。

「わるい!」

僕は片手を上げて、店に入った。

周りにも、その頃の面影の在る何人かが座って手を振っていた。

 そして、席に着く頃には、皆、すっかりあの頃の自分たちに戻っていた・・・。


~~~~~~


古き良き頃の記事より

2004-09-23 00:00:44 記す

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2006-12-23 (土)クリスマス・イヴイヴだし

天使

[]ねがいごと 23:18 ねがいごと - ことだまり を含むブックマーク はてなブックマーク - ねがいごと - ことだまり ねがいごと - ことだまり のブックマークコメント

 羽音ちゃんは、おとうさんとおかあさんとの三人暮らしです。

 だけれど、おとうさんは、お仕事で遠い場所に行っていて、なかなか帰ってこれません。

 おとうさんの大好きな羽音ちゃんはとっても寂しいのですが、ひとりでおうちの事をやるおかあさんは、もっと大変。

 なので、羽音ちゃんもおかあさんの事を手伝います。


 今日はクリスマス・イブ。

 羽音ちゃんは、おかあさんにたのまれて、近所のスーパーにおつかいです。

 黒いぼうしとコートとブーツは、おとうさんからの去年のクリスマスプレゼント。

 ちょっと小さくなってきましたが、まだまだ着る事はできます。


「さむいから、マフラーも手袋もして、お行き。」

 そうおかあさんに言われて、羽音ちゃんは聞き返します。

「さむい? 雪、降る? 」

 ちょっとその声には、期待が入り混じっています。

 でも、おかあさんのこたえは。

「天気予報では、晴れやゆうとったよ。」

「はぁ。」

 羽音ちゃんは、ちいさくため息をつきます。

 そう、羽音ちゃんは雪を待っているのです。


 とりあえず、気をとりなおした羽音ちゃんは、こっちはおかあさんに買ってもらった、真っ白なマフラーと手袋をして、元気に出かけます。

「ほな、行ってくるで! 」


 スーパーは大通り沿いにありますが、羽音ちゃんは大通りのそばにある公園の中を突っ切っていきます。

 そのほうが、ほんの少し、早いからです。

 裏門から入って、公園の木々の合い間を抜けると、公園の中央を抜ける道に出ます。

 調子が良いと、その信号が青なのですが、今日は残念ながら赤です。

 横断歩道の前で立ち止まって、ふと横を見ると黄色い小さな車が目に止まりました。

 凄く大きな荷物を載せています。

 そして、ふたりの紳士が、なにやら車をみています。


「なにしとんのやろ? 」 

 羽音ちゃんが、気になってそちらに向かおうとした時、信号が変わりました。

「あかんあかん、買いモンがさきや。」

 羽音ちゃんは、また、スーパー目指して走り出します。


 スーパーの買い物は。

 夕飯のシチューに使う鶏肉、にんじん、じゃがいも、たまねぎ。

 そして、チョコエッグをひとつ。

 これは、お駄賃。

 本当は、クリスマスケーキもほしい所ですが、ケーキは次におとうさんが帰ってくるまでは、たべないっ! って羽音ちゃんが決めているのです。

 買い物が終わったら、急いで帰ります。


 帰り道、再び羽音ちゃんは、あの公園の交差点に差し掛かりました。

「あ、そう言えば、あの車。」

 羽音ちゃんは、行きがけに見たあの車のことを思いだし、そちらの方を見てみると、まだ、あの車が止まっているようです。


 二人のうち、太った紳士が、ちょっと肩をすくめます。

 背の高い方の紳士も首を振ります。

 どうも、お手上げのようです。

 気がつけは、羽音ちゃんの足は、もうそちらに向かっていました。


「おっちゃん、どないしたん? 」

 羽音ちゃんは、太った紳士に話しかけます。

 とつぜん、小さな女の子に話しかけられて、その紳士はビックリしたようですけれど、にっこり笑ってこたえてくれます。

「車がね、故障してしまったのだよ。

 大事な荷物を運んでいるのにね。」

「大事な荷物? 」

「そう、明日までに届けないといけないのだけれどね。」

「そうなんや。車、どこが悪いん? 」

 今度は、背の高いやせた紳士が答えます。

「私たちには、全くわからないのですよ。

 なにぶん、車には詳しくないので。」

「そら、こまったなぁ。」

 そういって、羽音ちゃんは今度は辺りを見回しました。


 夕暮れ時。 

 今日は金曜日なので、会社を終わって帰る人もたくさん通っています。

 残念ながら、みんな何かクリスマスの予定があるのか、困っている二人の紳士に声をかける人はいません。

 その様子を暫く見ていた羽音ちゃんは、とつぜん、こう言いました。

「よっしゃ、まかしとき。」

 二人の紳士は、その言葉にビックリした様子で、顔を見合わせます。

「まかしときって・・・。」

 太った紳士が、そう聞き返そうとした時。


「すんませーん! 自動車にくわいしい人ぉ! 誰かいてませんかぁ!! 」

 羽音ちゃんの声が、公園中に響きました。

「このおっちゃんたちが、困ってまーす! 誰か、車に詳しい人、助けたってくださーい!! 」

 その堂々たる呼びかけに、太った紳士は、思わずにっこりしてしまいました。


 たくさんの人が、こっちを見ました。

 何人かは、笑っているようです。

 何か、相談している人もいます。

 そして。。。ついには。。。


 みんな、また、何事もなかったかのように歩き始めました。

「はらら」

 羽音ちゃん、拍子抜けです。

 しかし、羽音ちゃんはメゲません。

「よっしゃ、こうなったら・・・」

 再び、大声を張り上げようとした、その時。


「羽音ちゃーん! 」

 誰かが、呼ぶ声がします。

「誰? あたしを呼ぶのは? 」

 辺りをきょろきょろ見回す羽音ちゃん。

 そして。

 もこもことした体型の人が走ってきます。

「あっ! くまちゃん!! 」


 そう、幼稚園のくまだ先生でした。

 くまだ先生は、幼稚園では、結構、みんなの人気者です。

 いろんなお話を知っていて、羽音ちゃんたちに聞かせてくれますし、たくさんの遊びも知っていて、羽音ちゃん達に教えてくれるからです。

 でも、ちょっと気が弱いんです。

 あれ? そういえば、今日も?


「くまちゃん、みっちゃんとデートちゃうん?」

 羽音ちゃんのところにやっとたどり着いたくまちゃん・・・ではなくて、くまだ先生は、汗をかきかき、顔を真っ赤にしました。

「は、羽音ちゃん。ボクをくまちゃんて呼ぶんは、かまへんけど、三森先生をみっちゃんっていうんは。」

「そやかて、みっちゃんはみっちゃんや。」

 おやおや、やっぱりくまだ先生より、羽音ちゃんが一枚上手のようですね。

「それより、くまちゃん、このおじちゃんたちが、困ってんねん。

 くるま、なおしたって? 」 

「えっ、車? 」

 くまだ先生が顔を上げると、太った紳士と背の高い紳士がくまだ先生に微笑みかけながら会釈します。

 くまだ先生も、慌ててお辞儀。


「このおっちゃんたちの車やねん。」

 羽音ちゃんが、くまだ先生に言います。

「いやいや、ここで場所を確かめようと地図を広げたんですが、そのまま動かんようになりましてな。」

 太った紳士が言いました。

「なるほど、ほな、ちょっと見てみましょ。」

 そう言いながら、くまだ先生は、車のボンネットを開きます。

 羽音ちゃんも、心配そうに覗き込みます。


「はあはあ、ふんふん、ああ、これが、そうして、なるほど、なるほど。」

・・・くまだ先生、解っているんでしょうか?

「ああ、これや、これ・・・え? ちゃうの? じゃ、これがこうして。」

「・・・くまちゃん? 」

 心配になって、羽音ちゃんが声をかけます。

「おお! 大丈夫、大丈夫! せんせはな、こうみえても、むかし。生駒で頭文字Kと。

 おおっ? なんじゃ、これは?? 」

 二人の紳士も、顔を見合わせます。

「せやから、ここが、だーっとなって、これにガッときて、これが。あ」


ぶろろろろろろろろん!

 不意に、エンジンがかかりました。

 羽音ちゃんが、歓声を上げます。

「すっごーい! くまちゃん! すごいなぁ! 」

「いやぁ、はははは。」

 くまだ先生は、嬉しそうに頭をポリポリかいています。

 ちょっと、目がおどおどしていますが・・・それは、気にしないことにしましょう。


「いや、本当に助かりました。ありがとう」

 太った紳士が、くまだ先生に声をかけて、手を出しました。

 くまだ先生も手を出して、ふたりはがっちりと握手をしました。

「ありがとうございます。」

 背の高い紳士も、その手を握ります。

 三人は、がっちりと握手しました。

「いやいや、当然の事をしたまでですから。」

 鼻の頭を黒くして、くまだ先生は本当にくまが笑っているみたいです。

「ささ、また、止まらないうちに早く、出発してください。」

「ありがとう、そうしましょう。」


 二人の紳士は、そういうと車に乗り込みました。

「ああ、そうだそうだ。」

 太った紳士が、小さな車の小さな窓から顔を出して、いいました。

「何か、お二人にお礼がしたい。そう、何か願い事はありませんか? 」

「願い事・・・ですか? 」

 不審げにくまだ先生が聞き返します。

 太った紳士は、笑って応えます。

「いやいや、本当は何かお礼を差し上げられればよいのですが、何分今は人に届ける荷物ばかりで、良い持ち合わせがありません。

 しかし、わしらは、この先、道すがら、色々な神社仏閣に立ち寄る予定になっております。

 そこでささやかなお礼ではありますが、よろしければ、お二人の願い事を一緒に願って差し上げましょう、という訳です。」

「ほお、なるほど。願いごとねぇ。」

 くまだ先生は、腕組みして考え込みます。


 でも、羽音ちゃんの目がきらりとしました。

「おっちゃん! ほんならな。雪降らせてほしい! 」

 太った紳士が、不思議そうな顔で聞き返します。

「雪ですか? どうして、雪を降らせて欲しいのでしょう? 」

「おとうちゃんが、帰ってくるねん! 」

「おとうさんが? 」

 羽音ちゃんが、こくりとうなずきました。


「おとうちゃんな、忙しいからなかなか帰ってこれへんねん。

 でな、うちがこの前な、

 『次はいつごろ帰ってくんの?』

 って聞いたらな、

 『そうやなぁ、この辺に雪がふるころかなぁ』って言うてん。

 そやから、うち、はよ雪が降ってほしいねん。」

 太った紳士は、まだ、不思議そうな顔で聞きます。

「でも、それは、雪が降ったら、おとうさんが帰ってくるということではないでしょう?」

 羽音ちゃんも、にっこり笑って答えます。

「わかってるで。

 でもな、この辺に雪が降ったちゅうニュースをおとうちゃんが聞いたら、

きっと、羽音との約束、思い出すと思うねん。

 ああ、はよ帰れる様頑張ろう! っておもってくれる気がするねん。

 それで、ちょっとでもはよう帰ってきてくれたら、羽音もおかあかあちゃんも嬉しいやんか。

 そやから、はよ、雪降ってほしいんよ。」


 それを聞いた太った紳士は、にっこりと笑いました。

「羽音ちゃんの願いは、わかりました。

 しっかりと、神様にお願いしてきますよ。

 さてと、先生の願いは・・・。」

 そういいながら、先生の方をみると、先生は。

「うーん、願い事。うーん。」

と考えてはいますが、どうも、ポケットの中を気にしているようです。

 羽音ちゃんが、声を潜めて紳士に言います。

「あれはな、誰かさんのメールか電話をまってんねん。」

 太った紳士も微笑みました。

「なるほど、その様ですね。」

 そして、改めて羽音ちゃんとくまだ先生をみて、言いました。


「お二人とも、本当に有難う!

 お二人の願いは、かならず神様にお伝えしますよ。

 それでは、良いクリスマスを! 」

 そういうと、車は走り出しました。

「さいなら! おっちゃんたちも、気をつけてなぁ! 」

 くまだ先生も、慌てて見送ります。

「あ、あっ! お気をつけて。」

「さようなら! お二人もお元気で!! 」

 太った紳士の声が、最後にそう聞こえた時、黄色い小さい車は路地を曲がって見えなくなりました。


「あー、いってもうたなぁ」

 羽音ちゃんが、振っていた手を下ろしながら言いました。

 一緒に手を下ろしながら、くまだ先生がはっと気付きます。

「ああっ? ボクの願い事は・・・? 」

「だいじょうぶやて。くまちゃん。」

 羽音ちゃんは、そう言ってくまだ先生の背中をドンと叩きました。

「ほな、うちも帰るからな。バイバイ!くまちゃん。」

 そうして、羽音ちゃんは、おうちの方に駆け出しました。

 途中で立ち止まって、くまだ先生に叫びます。

「くまちゃん! がんばるんやでー!! 」

「おー! 」

 そう返事した物の、くまだ先生は、小声で呟きました。

「いや、がんばれっちゅうたかて、相手の居らんことには・・・なぁ。」


「良い子でございましたね。」

 黄色い車を運転しながら、背の高い紳士が言いました。

「ああ、ほんとうに良い子だ。実際に会ってみて、とても良かったよ。」

「はい、それでは予定通りの贈り物でよろしいかと。」

「もちろん!いや、もう一つプレゼントしよう。あの子の願いどおりに、ね。」

「かしこまりました。お安い御用でございますよ。」

 黄色い車は、いつの間にか空中を走っておりました。

 それは、誰の目にも留まりませんでしたが、どこからか、鈴の音がしておりました。

 そうして、羽音ちゃんの町に、静かにしかもすばやく、雪雲が広がり始めたのです。


 その白い物は、あと角を一つ曲がると羽音ちゃんのうち、という所で羽音ちゃんの目の前に落ちてきました。

 羽音ちゃんは、それにスグ気付きました。

「ユキ・・・? 」

 次に落ちてきた白い物を、そっと手のひらに受けて見ました。

 白い物が、羽音ちゃんの手袋を通した熱で、ふわっと溶けました。

「雪や、雪や! わーい、雪や! 雪がふったぁ!! 」

 そして、羽音ちゃんはハッと気付きます。

「あの、おっちゃんたちや! おっちゃーん! ありがとう! 」

 羽音ちゃんは、そう叫ぶと、この事をおかあさんに伝えようと、駆け出しました。

 そして、角を曲がると。

 おうちの前に、もっと素敵なことが待っていました。


「羽音! ただいま! 」

「おとうちゃん! 」

「おう! 急に休みが取れてな、連絡もそこそこに飛んで帰ってきたんや。

 ほら、羽音の好きなケーキも買うて来たで。

 はよ、こっちおいで! 」

「うん! お帰り! おとうちゃん!! 」

 羽音ちゃんは、おとうさんの胸に飛び込んでいきまいた。

 もちろん、賢い羽音ちゃんは、心の中でこう呟いていました。

『おっちゃんら、ありがとう! おっちゃんらは、きっと・・・。』


 その年の羽音ちゃんのクリスマスは、最高のクリスマスの一つでした。

イラスト by テドさん

 あ、そうそう。

 くまだ先生です。

 くまだ先生は、羽音ちゃんと分かれて、トボトボと家路についていました。

 相変わらず、ならない携帯の入ったポケットを気にしながら歩いていました。

 と、不意に、その携帯電話が震えて、ベルが鳴りました。

 くまだ先生が、慌てて取り出すと、そこにはメール受信の小さなマークが。


 くまだ先生は携帯を開きました。

 メールには、こう書いてありました。


『くまだ先生。

 先生からのメール、今着きました。

 もう、1時間も過ぎてしまったけれど、いまからそこで待っていてもいいですか?

 三森』


「・・・やった、やったぁ、やったぁぁぁ!! 」

 くまだ先生がダッシュをしたのは、生涯3度のうちのこれが2回目でした。

 そして、くまだ先生にとって、最高のクリスマスの始まりの年が、この年のクリスマスからでしたってさ。

~ Fin ~

初出:

2004年12月24日 BLOG FRIENDS トラックバック企画

        「羽音際」参加作品

※一部、改稿しています。

Cafe Bohemia(紙ジャケット仕様)

Cafe Bohemia(紙ジャケット仕様)

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