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2010-08-22 (日)

[]リサイクルショップ 18:04 リサイクルショップ - ことだまり を含むブックマーク はてなブックマーク - リサイクルショップ - ことだまり リサイクルショップ - ことだまり のブックマークコメント

「パパ、トイレで誰か泣いてる」

中学2年の凛々子が、起こしておびえた声でそう囁いたのは、もう夜中の2時過ぎのことだった。

一瞬、寝ぼけているのかと思ったが、最近は、パパは不潔だとか近寄るなと言って俺から距離をとってる凜々子が、俺のパジャマの裾を掴んで小刻みに震えている様子は、寝ぼけているですまされることでは無さそうだった。

念のため、後ろを振り返ると、一度眠ると何が有っても起きないママが、ぐっすりと眠っている。

親子三人がここに揃っているのに、トイレの中で泣いている奴がいるとすれば、侵入者に違いない。

「よし、お前はここで待っていなさい」

だが、凛々子は首を振る。

「パパと一緒に行く」

まあ、ママが側に居るとは言え、多少のことで起きないママでは、誰もいないと々と言うことか。

「わかった、パパの後ろに隠れているんだぞ」

そう言うと、俺はベッドの脇にあった雑誌丸めると、そっと部屋を出た。


一戸建てとは言え、小さな家だ。

三階は二間。

奥が夫婦の部屋で、隣の小さな部屋が凛々子の部屋である。

二階はダイニングキッチンで、ワンルーム

一階にバストイレがあるが、敷地の半分はガレージになっている。

三階建てで2DK,狭小住宅と言われても仕方のないサイズである。

中古で手に入れたのだが、会社の同期が新築で購入直後にご両親が亡くなり、突然実家の商売を継ぐことになったので、格安で譲り受けたものである。

それ以来、十年弱。

空き巣や泥棒に入られたことはなかったが、近所にはそう言う被害も多く、とうとう家もという気持ちはあった。

ただ、トイレで泣いている強盗というのは、ちょっと腑に落ちなかったが。


音を立てないよう、ゆっくり階段を下りる。

ゆっくりと、とは言え、俺と凛々子二人分の体重が移動する度に、階段はぎしぎしと音を立てる。

だが、誰かがその音に気付いて動く気配は階下からは伝わってこない。

やがて、一階に到着し、そっと、トイレの方を覗く。

灯りは廊下に常夜灯が点いているだけで、トイレの灯りは消えている。

だが。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・・


確かに泣き声が聞こえる。

「パパ、怖い・・・」

凛々子が身を固くする。

大丈夫だ、パパがいるから。行くぞ」

怯える凛々子に声をかけて、俺はそっとトイレの前に進んでいく。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・・


泣き声は続いている。

だが、ちょっと、様子がおかしい。

あれは、明らかに大人の泣き声ではない。

それは、そう。

子供みたいだね?」

後ろから、凛々子が囁く。

俺は、黙って頷くと、トイレのドアの前に立つ。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・


泣き声は続いている。

俺は、ちょっと凛々子の方を振り返り、頷く。

そして、トイレの中に声をかけた。

「誰か、いるのか?」


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・


泣き声は続いている。

俺は、声をかけ続ける。

「泣いていてもわからない。

 誰かいるなら、返事をしてくれないか?」


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・


だが、返事はなく、ただ、泣き声が続いている。

「ちょっと、ここを開けるよ?」

そう言いながら、トイレのドアノブに手をかける。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・


やっぱり返事はない。

ただ、泣き声が聞こえるだけ。

「いま、電気を付けてあけるから。いいね?」

俺は、そういいながら、もう片方の手を電灯のスイッチに手を伸す。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・


泣き声は止まらない。

俺は、もう一度、凛々子の方を見る。

凛々子も、俺を見て頷く。

俺は、トイレの方に向きなおり意を決して、声をかける。

「じゃあ、1,2,3で開けるからね。せーの、いち、にい、さんっ!」

かけ声と同時に、俺は電灯のスイッチを入れてドアを開いた。

だが。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・


泣き声はまだ続いていた。

そして。

「きゃーっ!」

凛々子が悲鳴を上げた。

「ど、どうした、凛々子っ!」

見れば凛々子が便座の方を指さして震えている。

大丈夫か?!一体何が」

問いかける俺に、凛々子が応える。

「うぉ、ウォシュレットが・・・泣いてる・・・」

振り返って便座を見た俺にも、はっきりとわかった。


しく・・・しく・・・しく・・・しく・・・・

間違いなく、その泣き声は、便座から聞こえていた。

(つづく)


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