私は毎日すべての事がだんだん良くなる

2007-05-29偽アマゾン撮影隊騒動記

[] -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-12 23:04  -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-12 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる を含むブックマーク はてなブックマーク -  -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-12 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる  -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-12 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる のブックマークコメント

 

 

◆ バチカンの完パケ ◆

 

 LAX(ロスアンジェルス国際空港)に向かう前に、THEOREMの黒岩さんから託されたヴィデオテープがあった。

「カナダのサーカスなんですよ。今までのとはまったく違う凄い連中です。なんとか日本で興業できるようにもって行きたいんですけど、ルートの開拓できませんかね?」

「いいすよ。帰ったらそれ系の人にあたりを取ってみますよ」と、気安く預かる小林。

 

 たった十数秒のフィルムを入手するためだけにロスアンジェルスに行った俺たちは、無事成田に帰ってきた。税関を通り抜けようとすると、小林が入国管理官に呼び止められる。ノーチェックで抜けた俺はカウンターの脇で待つが、管理官は小林にトランクを開けろと言う。

「変なものなんか持ってませんよ」と言う小林をよそに、トランクの中を綿密に改める管理官。

「このヴィデオは何です?」

「あぁ、それはカナダのサーカスを紹介するテープです」

「サーカス?」

「知り合いから頼まれて持ち帰ってきたんですよ」

「……ちょっと中身をチェックさせてもらいます。ここで待っててください」

「はぁ……」

 しばらくして戻ってきた管理官は、

「これベータですよね? 何で見られないんだろう?」と小林を見る。

「あぁ、それはベータカムというプロ用のテープで、放送に使ったりするんですよ」

「そうやって、いけないテープを持ち込む業界の人、多いんですよね」

「勘弁してくださいよ。ちゃんとしたテープですって」

 しばらく小林を見つめていた管理官は、カウンターから続く長い行列をチラリと見やると、

「まぁ、いいでしょう……」と、意外とあっさりと解放してくれた。

「やっぱりミテクレって重要だよね、コバちゃん」

「君にだけは言われたくない」

 帰国の瞬間、いきなり憮然とする小林であった。

 

 後日談だが、帰国後、小林はあまり深く考えることなく、そのテープをしかるべきスタッフを通じて興業系業界へと流した……が、後の祭り六日のアヤメ。何でちゃんと自分たちの居場所を確保しておかなかったかなぁ……と、悔しい思いをしたのはしばらく後のことだった。そのテープに収録されていたのは、なんと『FASCINATION』『SALTIMBANCO』『ALEGRIA』そして『QUIDAM』で、それを観たすべての日本人の度肝を抜いた、あの『CIRQUE DU SOLEIL』だったのである。このテープに対する貪欲さに欠けていたため、小林も俺も、『CIRQUE DU SOLEIL』の単なる観客のひとりとして興奮するだけに終わってしまったのだ。場合によっては美味しく関われたかもしれないが、こういうニアミスは往々にしてある。それもまた良しではあるが。

 

 それからのスケジュールは、記憶する間もないほどのスピードで、順調に消化していった。初号試写も問題なくクライアントのOKを取ることができ、仕上げの各工程もタイトながらもスムーズに進行する。それぞれのパートで全力を振るったスタッフ全員のパワーが、一本のハイヴィジョンテープに収められていく。

 ここに至っては、ストや台風を始めとする数々のアクシデントも笑い話と化している。みんな「上がり」の達成感に酔っているのである。

 すべての作業を終え、完成パッケージのクライアント試写が行われた。KUSUBURIの宣伝部長を始め、担当課長および関係担当者をIMAGENの試写室に招く。二度繰り返して上映を行い、問題無いと検収のお言葉を頂戴した。

 

 完成!

 

 細かいことを言えば、大手町ショウルームの機器にセットして、調整終了までが契約上の納品となるのであるが、制作担当の俺たちの出番はこれで終わりだ。

 クライアントを試写室から送り出すと、俺たちは改めて関係スタッフだけで最後の試写を観た。

 そのわずか十分弱の間、誰ひとり身じろぎせず、スクリーンに食い入るように、観た。

 一人ひとりの胸の中には、制作期間としては短くも、たくさんの事があったこの作品に対する、それぞれの熱い想いが去来していたはずである。

 映写終了後、IMAGENの映写技師は、すぐに灯りを点けることはしなかった。気の利くヤツだ。

 

 わずかな時間ではあったが密度の濃いひとときが流れたあと、小林が立ち上がり

「バチカンっすね! みなさん、ありがとうございました!」と頭を下げた。

 バチカンとは「バッチリ完璧」のことである。それぞれが全員と、握手をしたり肩を叩き合ったりしてお互いの苦労を称えあい、ひとり、またひとりと、その試写室を後にしていく。

 

 撮影監督の斎藤さんが、俺のところにやってきた。

「ナイス・ムードメイカー」

 斎藤さんは、ひとことそう言うと、俺の頭をコツンと叩いた。

 

 それはとっても心地よい痛みだった。

 

 

              了

 

 

2007-05-19偽アマゾン撮影隊騒動記

[] -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-11 17:33  -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-11 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる を含むブックマーク はてなブックマーク -  -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-11 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる  -『偽アマゾン撮影隊騒動記』-11 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる のブックマークコメント

 

 

◆ California Dreamin' ◆

 

 代理店の不良営業とダクションの不良プロデューサーが、簡単な荷物をぶら下げてLAX(ロスアンジェルス国際空港)のゲートを出ると、そこには『AMAZON』とだけ書かれたプレートを掲げたヨシさんが待っていた。

 ヨシさんは、THEOREMの若いコーディネイターだ。最近参加したスタッフだそうで、俺たちは初めてお世話になる。口数が少なくガッチリとした体型で上背もあり、頼れそうな印象だ。

「お疲れさまです。じゃあ、行きましょうか」

「あ……はい。よろしくお願いします……」

 呆気ないのか素っ気ないのか、とにかくそのままステーションワゴンに乗って、最初のライブラリーへと向かった。

 どうでもいいけど眠い。キッチリとビジネスクラスで飛んでは来たが、ずっと窮屈な飛行機の中で揺られていたのである。日本であればすでに深夜。俺も小林もさすがに言葉少ない。しかし時差ボケを克服する一番の方法は「現地の夜になるまで決して寝ない事」である。それに俺たち二人には、これからアマゾンのフィルムとの大事な大事なご対面があるのだ。

 夏を思わせるロスアンジェルスのカラッとした陽気の中、ワゴンはダウンタウンを横目にハリウッド・ブールヴァードを郊外に向けて走る。抜けた青空の中に低くシンプルな建物が続く。カッコイイ。パームツリーや芝など緑が多いが、すべて移植されたものだ。もともと砂漠に作られた街のため、ロスアンジェルスの地下には水源がなく、緑を維持するために朝と夕にスプリンクラーでの散水があちらこちらで見られる。この水はわざわざ遠くグランド・キャニオン(コロラド川)から、500キロを越えて引いてくるのだそうだ。スケールが違いすぎて実感が湧かない。

 しばらく走り、ワゴンは広い敷地を持つパステルグリーンの建物に滑り込んだ。

 

 紹介もそこそこに、オフィス裏のライブラリールームに通されると、決して狭くはない部屋全体がフィルム缶で埋め尽くされている。ちょうど図書館の棚のようにフィルムのラックが隙間を極端に狭めた感じで連なっている。

 図書館で言えば司書にあたるであろう女性が、片隅のでかい作業デスクの上を指さす……と、そこにはすでにピックアップされたアマゾン関係のフィルム缶が山になっていた。

「じゃあ、ごゆっくり。僕はちょっとオフィスまで一度戻って来ますので」

 ヨシさんは圧倒されている俺たちを残し、淡々とした表情のままその部屋を後にした。

「……こんなに……あるの? ……」

「これ全部アマゾン?」

「取りあえず……見てみる?」

 デスクには『movieola(ムビオラ)』という、ラッシュを見るための簡易映写機が据えてある。一本目のフィルムをリールにかけ、ライトを点けると小林がハンドルをゆっくりと回し始めた。俺も隣で五インチほどのムビオラのヴューウィンドウを覗きこみ別なフィルムのチェックを始めた。

 カララララララ……とムビオラを回す音が重なる。

「おぉ、アマゾンだぁ」

「ホントだ。アマゾンここに居たぁ」

 これなら絶対に見つかる。確信が俺たちを元気付かせた……のは、ほんの三十分ほど。

 カラララ・ラ・ラ・ラ……ラ………とムビオラの音が遠くなっていく……。

 時差呆けと安心感、それと膨大なフィルムとの対峙が、俺たちの緊張感を少しずつ少しずつ奪っていったのである。

 無意識に、そしてほとんど機械的にフィルムをかけ、ハンドルを回す。目はヴューワーを覗いているのだけれど、視線はすでに虚ろ。

「あぁ、コバちゃん……これ……どうかなぁ?」

「んー? ……どれぇ……? ……あぁ……いいかもねぇ……」

「……じゃあ……キープしとこうか……」

「そうだね……一応ね……」

 

「どうですか? いいのありました?」

 ヨシさんが戻って来た頃には、ちゃんとチェックできたかどうかは別にして、フィルムの山はほとんど確認済みスペースに移動しており、キープフィルムも何本か選り分けられていた。

「ああ、いい調子みたいですね。これが押さえの分ですね? じゃあキープ頼んでおきますから」

 ヨシさんが手続きしてくれている間に残りも見終わり、俺たちは固まった背中を久しぶりに伸ばした。

「終わりました? さて、じゃあ次に行きますよ」

(オニ……)

 体格のいいヨシさんの背中に向かって、俺と小林二人の視線が突き刺さった。

 

 オニのヨシさんに連れられて次のライブラリーに着く頃から、記憶がとぎれている。そこでもひたすら見たのは確かで、その後、地ビールの工場兼イタリアンレストランで夕食を摂っているあたりから、まったく記憶が欠落している。

 

 当然の如く、ヨシさんは翌日もハードスケジュールを抱えて迎えにきた。

 俺たちはまずヨシさんに頼み、ロスアンジェルスに来ると必ず寄る『Melting Pot』というオープンカフェに連れていってもらう。繁華街からは少し離れた五差路の角にあるその店で朝食を摂るのは楽しみのひとつだ。揃って『Renaissance Brunch』というメニューにする。大きめのワッフル二枚とカリカリのフライドベーコン、そして卵。

 卵料理は『Two eggs Over Easy』だ。アメリカには何と卵の調理方法が二十数通りあるそうだ。Sunny side upやScrambleといった、定番としか普段出会うことのない日本人には新鮮な驚きがある。Over Easyはオムレツのようなカタチに仕上げる目玉焼きで、中の黄身はトロリと半熟。ベーコンはどういう焼き方(揚げ方?)をしているのだろう、『Melting Pot』以外で見かけたことがない。両手で軽く割れるほどパリパリしていてすこぶる美味。大盛りサラダもついた『Renaissance Brunch』は、大きなプレートで結構な量だ。

 ニコニコ顔のオジサンがプレートを下げに来て「Enough?」と覗き込む。俺たち二人は腹をパンパンと叩いて笑顔を返した。満ち足りた朝食。

 

 オニの淡々ヨシさんは、広いロスアンジェルスの中を、あっちへこっちへと案内してくれる。

『SHERMAN GRINBERG FILM LIBRARIES, Inc.』

『UNIVERSAL STUDIO』

『DISNEY FILM LIBRARIES』etc.

 欲しいフィルムが山のようだ。日本ではサッパリなのに、流石は映画の国アメリカ。

 一通りライブラリーを確認した後、THEOREMに立ち寄り黒岩さんと再会。そこでリストアップした素材を再検討し、東京に連絡を取る。内容を確認して各ライブラリーにプリントのオーダーをすると……

「終わりだぁっ!」

 

 時にオニと思えたヨシさんの、淡々としながらも効率の良いコーディネイトのお陰だ。今後はオニに見える人には感謝するようにしよう。

 

 

2007-05-14偽アマゾン撮影隊騒動記

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◆ アプローズ!(拍手喝采)◆

 

 数時間後、まだ暗闇の中を俺たちは撮影機材や風除け兼反射板であるカポック(※三×六尺の発泡スチロール板)などを抱え、ホテル裏のアサガオ群生地に向かった。

 改めて主役を張れそうな蕾を探すと、可能な限りの風除けを施しキャメラをセットした。後は祈る思いで日の出を待つ。

 

 やがて群青色から紫に、そしてオレンジに変わって行く天然の照明をたっぷりと浴びた主役の蕾は、たった四人の観客を前にした天然のステージで、ゆっくりとゆっくりと生涯一度だけの最高の演技を披露し始めた。ゴクリ……と俺たちの喉が鳴る。

 

 ――ついに咲いた!

 

 小学生の頃、庭先で初めて咲いたアサガオを見た時以上に爽やかな感動の一瞬。朝露が煌めき、瑞々しくたおやかで、少し儚げにフルフルと揺れるアサガオの花は、素晴らしく美しかった。

(コイツ、自分が咲く場所と時間をちゃんとわきまえているんだな。あんな部屋でなんか咲きたくなかったんだな……)

 人の干渉を拒み、自然な状態での演技に拘った主役は、さすがに野趣たっぷりの『野アサガオ』そのものだったのである。結局彼女に対する演出はまったく不要だった。

 ただ一度のデビューステージを終えた彼女の演技はフィルムに収めた。あの僅かな時間の全てはフィルムのコマの中で、いつまでも生き続けることができるのだ。後は俺たちがたくさんの観客に向けてこの感動を発信してあげるだけ。

 映像制作の達成感はこんな時にも訪れる。四人の観客はそれぞれがバチンと手を叩きあうと、無言のまま機材の撤収にかかる。

 機材を抱え上げた俺たちは愛すべき役者を振り返った。緑の中で優しく揺れるその姿を忘れることはないだろう。

(今度は俺たちがきっちりといい仕事してあげるよ)

 そう誓った直後、俺の頭は東京で待つ次のステップへと一足先に帰っていった。

 

 

◆ アマゾン遙かなり ◆

 

 東京に戻ってからの撮影は順調だった。幸い天候にもずっと恵まれ、大きなアクシデントも無く着実に予定の撮影をこなしていくことができた。

 難航していたのはただひとつ、アマゾンのライブラリー映像だ。西表で考えていた時には、正直言ってこうまで苦しむことになろうとは思っていなかった。『イグアスの滝』もキャノピーのエアリアルもある事はあるのだ。しかし素材はノーマルのVTR。いくらプロがおさえた素材でもノーマルVTRでは解像度が低く、とてもハイビジョン作品で使うことはできない。小林に先行して問い合わせておいてもらった、期待のMHK、オニーOBK、IMAGENには無かった。当時はこの三社になければハイビジョンはほぼ諦め同然である。小林はさらにその先のフィルムライブラリーへのサーチを始めてくれていたが、はかばかしくない。

 邦映に『イグアスの滝』があると聞き、みんなで試写を見に行った。確かに『イグアスの滝』のフィルムだ。三十五ミリ、画質も申し分ない。いい感じで突っ込んで行くエアリアル、天気も最高だ。

 そこまでは完璧だ。ところが……

「あれは……何?」

『イグアスの滝』の大きなポイントである『悪魔の喉笛』という名の、グワッと切れ込んで一際水量が豊かな一角に突っ込んで行く、とても絵になるアングルのキャメラワークなのだが、その『悪魔の喉笛』に張り出している岩場の上に何かある。空中のキャメラがそこに滑っていく。

「うわっ!」

 一同、思わず仰け反った。

 そこには、小さな寺のお堂のような建物が建っている。しかもどう見ても日本の寺だ。

「何あれ? 何で? どうしてあんなもんがあそこにあるの?」

 それは邦映配給の邦画の素材だった。ある鄙びた村が妖怪の呪いで全滅し、陥没した大穴に川の水がどうと流れ込んでいる、というシーンだったのである。そいつらは、そのシーンを撮るために、わざわざ地球の真裏の『イグアスの滝』に、小さな古びた寺を再現していたのである……あっぱれ! 感服つかまつった!

 しかし、しかしである。さすがにアマゾンシーンに日本の寺があったら洒落にもなんにもなりゃあしない。

 スリーアウト! チェンジ!

 

 その後、しまいには電話帳で名前が『アマゾン』というだけで電話をかけ、「そんな情報聞いたことないですか?」と尋ねる始末。電話の先は雑貨屋だった。

 そうこうするうちにクランクアップは迫ってくる。すべてのラッシュ編が終わるまでにアマゾン素材を入手しないと間に合わない。俺と小林は顔を見合わせた。小林の諦め顔がニヤリに変わるまで、そう時間はかからなかった。俺の表情も同じだったはずだ。こういう時の俺たちの意気はピッタリである。まったく同じ事を考えていた。

「タッちゃん、これは仕方ないよなぁ」ニヤリ……。

「まぁねぇ、これだけ探したからねぇ。さすがにもうここいらには無いからねぇ」ニヤリ……。

「今からじゃ凄く大変だけど、やっぱり後はあそこしか……」ニヤニヤ。

「選択の余地なしでしょ。凄く大変だけど、誰かが犠牲にならないと……」ニヤニヤ。

「で、スケジュールと予算はどうよ?」

「まっかせなさーい!」

「じゃあ、決まりかな? 凄く大変で仕方ないけどね」言いながら小林はニコニコである。

 俺はその場で電話を引き寄せると、『0011-01-……』とプッシュし始めた。相手はロスアンジェルスの『THEOREM PRODUCTIONS, Inc.』。以前から撮影関係でアメリカに行った際には、いろいろとお世話になっているコーディネイト会社だ。知識もネットワークも豊富、フットワークも良い。ヘッドの黒岩さんからは快い返答が返ってきた。いくつかの心当たりに問い合わせてくれるとの事。

 早速俺たちは根回しを始めた。小林は制作管理の古田さんを巻き込んで、会社の上司とクライアントを。俺は蔦野さんを始めスタッフとの調整と、スケジュールや予算の確認。

 ロスアンジェルスへの「アゴ・アシ・マクラ」は当初予算のアローアンスの中でカバーできる。スケジュールはしかし、まったく猶予なし。明日にでもロスアンジェルスから「ある」という返事を貰って、すぐ飛び出すような勢いで動かないと間に合わない。取りあえず、予想出発日のロスアンジェルス便をキープしておく。

 

 翌朝、KUSUBURIアドバタイジングに顔を出すと、THEOREMの黒岩さんからファクスが届いていた。こちらが探しているモノに近そうな素材を保有しているライブラリー数社と、アーカイヴネームのリストだ。○や△、×がマークされている。大丈夫と信じてはいたが、実際に素材リストを見ると一安心である。これだけあれば何とかなるだろう。俺と小林は諸々の確認を手早く澄ませると、アーカイヴを確認するためのスケジュールを立ててくれるよう、黒岩さんに依頼した。黒岩さんからは、まるで用意してあったかのように折り返しファクスが届いた。六社のプレヴューがアレンジしてある。

「あれ? タッちゃん、これどーゆーこと?」

 ロスアンジェルスに到着する時間は現地時間で十四時過ぎである。黒岩さんから送られたリストは、その当日、二社回るようになっていた。

「すげーなぁ、着いたその足でいきなりっすかぁ……」

 

 

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2007-05-12偽アマゾン撮影隊騒動記

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◆ 愛しのアサガオ ◆

 

 翌朝、フェリーで石垣島の離島桟橋へ戻り空路那覇へ。行きはボロボロ、帰りは記憶にもまったく残らない程あっけない。というかこれが普通なのである。数日前の羽田から西表島までの、遠く長い道のりは一体何だったんだろう?

 東京に戻る村田さんたちを見送った、撮影部+俺の四人は、荷物をホテルに預けると午後の国際大通りに繰り出した。久しぶりに文明開化の飯が食える! と意気込む俺たちは、スタミナを付けにステーキ屋へ。でっかいアメリカン・ステーキをたらふく食べたのだが、何故か『あけぼの館』のお姉さんに作ってもらったおにぎり弁当がやたらと懐かしく思い出された。有ちゃんがポツリと「アレ、旨かったなぁ……」と呟いた一言に、全員遠い眼となってしまった。沖縄一番の繁華街にいる今、振り返る西表島奥深くでの出来事は夢の中だったようにさえ思える。

 喰えば元気になるという共通の特技を持つ俺たちは、「明日からガンガン探すぞぉ!」と意気込んでホテルの部屋へと戻った。急なリザーヴでツインが二部屋しか取れず、俺と斎藤さん、有ちゃんとセカンドという部屋割り。まずは斎藤さんと俺の部屋にそのまま全員入り、翌日からの段取リングの再確認をすることとなった。

 俺は何の気無しにいつものように窓に向かい、カーテンを開け外を一瞥する。夕陽に煌めく那覇港が望める……。

「ア――――ッ! 斎藤さんっ! あっ、あれ――っ!」

「どうしたぁ?」

 突然喚きだした俺の脇から斎藤さんが外を見る。有ちゃんたちも「何事か?」と窓際に集まる。

「ア――――ッ!」今度は俺以外の三人が喚きだした。

 

 俺の指の先百メートル程のところに、我らが愛しのアサガオが居た!

 それも群生だ!

 

 不思議な事にそれだけの距離がありながら、俺たちの眼は勝手にズーム・インし、それが間違いなくアサガオであることを確認していた。夕方だから当然しぼんでいる。不思議なことにそれでも俺たちにはちゃんとアサガオだということが判ったのである。

 一斉にきびすを返した俺たちは、我先にと部屋を飛び出し、ホテルの裏へと走って行った。なりふりなど構っていられない。のんびり歩いていたら折角のアサガオが逃げてしまいそうな気がしていた。

 ホテルの裏庭を斜めに突っ切り、敷地を巡る細道を挟んだ一角に駆け寄ると、アサガオは逃げもせず俺たちを待っていてくれた。今度こそ本当に出会えたのだ。ほんわりと淡い青・赤・紫のパステルカラーと、艶やかな緑の葉のアサガオだ。ただし、野アサガオなので花は小振りで、葉はシソの葉のような形をしている。それでもアサガオはアサガオだ。俺たちはそれぞれの思いを込めてそのアサガオを凝視めていた。

 

「よぉし! 行くぞ!」斎藤さんが気合いを入れた。

「はいっ!」

 まずはアサガオの開花シーンを撮らなければならない。これはタイムラプスという手法で、間欠的に一コマ一コマ撮影することで、時間短縮再生を実現する。本来であれば数分〜数十分かかる微妙なアサガオ開花の動きを、数秒の間で再現することができるのである。

 斎藤さんと有ちゃんは、なるべく大きく元気な蕾を持つツルを選り分け、切りとった。植物にハサミを入れる時に、これほど感情がこもったことは後にも先にも無いだろう。

 群生の中から選ばれた、今回の作品でもう一つの主役を努めるアサガオは、有ちゃんたちの部屋の片隅で、用意した竹の支柱に絡まり、黒いセットペーパーを背景に演技の準備を終えた。これから深夜にかけて、太陽の代わりとなる照明によって開花していくこととなる――ことを、誰も疑っていなかった。

 ところが、これが開かない。照明の角度や距離を変えようが蕾を代えようが、頑として開こうとしない。間欠的に切るシャッターではあるが、確実にフィルムは消費していく。しかし、ファインダーの向こうの蕾は、いくら待ってもその姿を変えようとはしなかったのである。時計は既に日付変更線をだいぶ前に越えた。そろそろ決断の頃合いだ。

 決断するといっても選択肢はひとつしか無い。部屋での撮影を諦めて屋外で撮るということだ。タイムラプスの場合、被写体のポジションが動くと再生時にとても不自然になってしまう。だから野生の状態は好ましくないのだが、やむを得ない。僅かな仮眠を取り、日の出に合わせて群生前でスタンバイすることとなった。

 

 

2007-05-05偽アマゾン撮影隊騒動記

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◆ 何か忘れてないか……? ◆

 

「ダイナミックさに欠けるんだよ……」

と、村田さんが言ったのは、一通りの撮影予定をこなし、明日は東京へ帰るという晩だった。予算より前にスケジュールがギチギチのため、多少の難はあっても戻らなければならない。

 確かに、いかに西表がアマゾン風味だったとしても、アマゾンのあの途轍もない大きさと比較するのはあまりにも酷だ。アマゾンの中にいったい西表島は何個納まるのだろう?

 そこで、帰京後ライブラリーを探すこととなった。村田さんの欲しい画は、圧倒的に大量の水を押し出し続ける、世界最大の『イグアスの滝』とキャノピー(アマゾンの密林を覆う樹冠部)のエアリアル(空撮)だ。ライブラリーを使う場合、こちらが意図したアングルやキャメラワークは期待できない。そりゃそうだ。それを撮った連中は、そいつらが撮りたいアングルとキャメラワークを追求したのだから。まぁ、ここで悩んでもしょうがない。東京へ戻って監督がラッシュ編集を進めている間に、俺がライブラリーを虱潰しにあたることとなった。

「きっちりと探しますよ。そこだけ空けてラッシュ進めていてください」と、深く考えることもなく俺は監督に請け合った。欲しい尺(フィルムの長さの単位/フィルム映画の場合、一秒の映像は二十四コマのフィルムからできており、その二十四コマの長さがほぼ一フィート、つまり約一尺)は、それぞれ五秒程度。併せてたったの十秒程である。大したことはない。

 

(まだ何かが足りない……)と、一同がもやもやしているところに、誰かの小さな呟き声が突き刺さった。

「アサガオ……」

 どっひゃあ!

 そう、まだアサガオが撮れていないのだ。いつでもイケルから大丈夫と、みんな結構気楽に構えていたのだが、気が付いたらあれ以降アサガオの復活に出会えていないのである。あんなに当たり前に見えたアサガオが、『未知の植物の種』以上に遭遇困難なターゲットとして、俺たちの前に立ち塞がっていた。明日このまま東京に戻ったら、恐らくクランクアップまでに二度とアサガオと出会う事はないだろう。沖縄しかない。でもあれほど期待していた西表のアサガオは、台風が中国大陸方面への旅路に連れ出してしまい、そのまま帰ってくる様子がない。

 

 結局、全体スケジュールの遅れを最小限にするため、村田さんたちは先に東京に戻って予定通りに他のシーンの撮影準備とラッシュ編を行い、撮影部が残ってアサガオを「本島で探すだね」という事になった。

 俺は東京の小林に連絡を入れ進捗を伝え、「――ってな訳で、撮影部三人とサポートで俺が残ることになったから、申し訳ないけれどライブラリーの下調べヨロシク」と、普通では考えられないのだが、代理店の営業に向かって仕事をオーダーする。小林もそこは判っている。そこらのハンチクな野郎を動かすくらいなら、ブロンクスで鍛えられた自分が動いた方が、早くて確実だということを知っている。感謝しながら俺は返す手で、今度は那覇空港付近のホテルをリザーヴする。

「まぁ、とにかく那覇に行ってから考えよう」

 段取リングが終わると、ゴチャゴチャ考えずに安心してしまうのは何故だろう?