私は毎日すべての事がだんだん良くなる

2006-12-16『人情裏長屋』

この二つの話は、お玉さんの「河童」に触発されてできました。

これも、もともとはお玉さんの記事へのコメントから(笑)。

楽しかったっすよ〜

 

『河童のみやげ』の冒頭部分はお玉さんからいただいたコメントで、それに応える僕のコメントを合わせて、この話ができました。

 

 

[] -05『河童のみやげ』 15:51  -05『河童のみやげ』 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる を含むブックマーク はてなブックマーク -  -05『河童のみやげ』 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる  -05『河童のみやげ』 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる のブックマークコメント

 

 

「辰の旦那、こんちは」

 

「おぅ。め組のお玉さんじゃねぇか、へぇりなよ」

 

「ごめんよ、お邪魔しますよ」

 

「ん? お連れさんかい?」

 

「た、辰殿、いつもの事ながらかたじけない

 め組の女房のお玉殿から知らせを聞いて

 傘張りの内職をほっぽりだして、参上したしだいだが……

 ごほっ、ごほっ……すまぬ、流行病でな

 心配にはいたらぬ……けっして、労咳などでは……ごほっ」

 

「ああっ! お侍様、だからいわんこっちゃない」

 

「おっと、でぇじょぶかぃ?」

 

「いえね、心配して、私ついてきちゃったんですよ

 辰の旦那、いつもどうも、おさわがせしちゃって……」

 

「いいってことよ

 旦那、汚ねぇとこだけど、まずはここに横ンなってくんな

 すまねぇが、おいらっちはこれから冬だてぇのに風通しが良くってよ

 旦那の身体に障るかもだが、勘弁してくんない」

 

「実は、このお方はね、昔河童に危ないところを助けられたとかで

 恩義があるらしいんですよ

 なんだかはわかんないんですけどね」

 

「そうかぃ 河童にねぇ……

 

 いやね、じつはウチのじいちゃんもな

 昔、河童に会ったなんて言ってやがったが……

 

 じいちゃんは大川端でシャカン屋やってたんだけどよ

 壁塗るにぁ、お玉が淵の土がいいってんで

 雨降って仕事ができねえってぇと、大川遡って土掘りに行ってたそうだ

 

 その日も、そぼ降る雨ン中、蓑を掻き寄せながら歩いていくてぇと

 道のところどころにイワナが落ちてたんだと

 不思議なこともあるもんだと、一つひとつ拾いながら行くと

 先ィの方に踊るように歩いている、小さな人影がある

 そいつぁ、肩に笹背負っててな

 そこに引っかけられてたイワナが

 踊るたんびに、ほたりほたりと外れて落ちちまってるんだと

 

『おぅい!

 そこのぼうず! せっかくのイワナが道ぃ泳いでるぞ』

 

 振り返ったそいつが河童

 じいちゃんは思わずしりこだま抜かれるんじゃあねぇかと

 ケツぅ押さえて逃げ出そうとしたらよ

 その河童が小首かしげて、ニコリと笑ったてぇんだ

 ンで、イワナを受け取ると、ありがとうのつもりか

 ほうの葉っぱでくるまれた小さな包みをくれたんだと

 

 そうだ、ちょと待っててくんない……

 

 これこれ、これがその『河童の包み』だ

 なんでも小石川の良庵せんせに言わせると

 『にっき』という滅多にねぇクスリだそうで

 胸の病にぁ良ぅく効くんだそうだ

 じいちゃんは呑みすぎで肝の臓やられちまったからよ

 せっかくのクスリも使う間がなくて、この通りの形見がわり

 

 旦那、これも何かのご縁だ

 こいつをもらってやってくんな

 胸が苦しい時に、ちょいっと一舐めすればたちどころだとよ

 ほぅら金色に透き通って綺麗だろ

 ちょいとココ舐めてみてくんな

 

 お! 咳おさまったじゃねぇか

 河童てぇのぁ凄いね

 そうだ! 旦那が元気になったら

 みんなでお玉が淵まで、胡瓜もってお礼参りと洒落込もうや

 

 

 あ、そうそう! 傘張りやってんだって?

 ンなら、こいつも持ってってくんねぇ

 『ヨク貼レル』てぇ糊だ

 ウチも版木に絵ぇ貼るときに重宝してんだ

 

 あ!「良く晴れ」たら、傘張りあがったりじゃあねぇかなぁ

 わっはっは! こいつあイケネェ勘弁してくんな」

 

 

 

 

[] -06『おばあちゃんの甲羅』 15:56  -06『おばあちゃんの甲羅』 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる を含むブックマーク はてなブックマーク -  -06『おばあちゃんの甲羅』 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる  -06『おばあちゃんの甲羅』 - 私は毎日すべての事がだんだん良くなる のブックマークコメント

 

 

おう?

 

なんでぇなんでぇ

由緒正しい河童の嬢ちゃんが南蛮モンで甲羅みがくたぁ

いってぇどういう了見でぃ!

 

おぅ ちょいと貸してみねぇ

ホラな? ここんとこ見てみな

南蛮モンだとな

こういった細けぇ繋ぎ目ンとこを磨き残しちまうのよ

 

何?

この甲羅はおめぇの孫娘のだって?

いやぁそんな歳にぁ見えねぇな

まるっきり嬢ちゃんだぁね

そっかぁ孫娘のねぇ……

だったらもっと丹精籠めて磨いてやらねぇと

なんたって甲羅の輝きが河童の宝だ

な?

 

ホレ

甲羅磨くのにぁ コレが一番だって

ン? コレかい?

ばれんって言うんだけどな

オイラたちが版木に紙ぃあてて刷るときにぁ

このばれんの良し悪しで仕上がりが変わっちまうんだ

 

このばれんにな

シャカン屋やってた じいちゃんゆかりの

お玉が淵の壁塗りの土を ちょいっとつけてよ

やさぁしく やわらかぁく こうやってまるぅく磨いていくんだよ

 

ほぉら どうでぃ 艶やかだろう?

これで嬢ちゃんの自慢の孫娘が なお一層美人になるてぇモンよ

 

おいおい!

なんてこった!

ココんとこ 欠けちまってるじゃあねぇか

ホラ しだりっかわの下っ端ンとこ

ココは おめぇ 人間の娘なら

さしずめ うなじか小股の切れ上がりてぇくらい

でぇじなところじゃねぇか

あん? 若い男に追っ掛け回された時に 転んで欠いちまったってか

ったく 近頃の若い河童てぇのぁ そそっかしくていけねぇや

そんな腰の据わらねぇ若造なんて相手にしちゃいけねぇよ

ついでに これも治してやらぁ

 

おぅ そこにあるニカワ取ってくんねぇ

そうそう それだ

おっと へたに指突っ込むんじゃねぇよ

そこらじゅうに貼っ付いちまって 今度ぁ 水掻き痛めちまうからよ

 

あんがとよ

こういうのぁな たぷりとつけちゃあいけねぇんだ

こう ちょいっとな……

で ここに版木の切れっ端をあてて……

こっから 彫り師の腕の見せ所だぁね

 

おしゃ カタチはこれで良しと

ここに伸ばしたニカワに墨加えて……

こんなモンかな?

もうちょと濃いぃか……

 

どうでぃ いいカンジだろ

せっかくだからよ

嬢ちゃんが自分でココんとこ磨いてやんな

そうそう 優ぁしくな

うめぇモンじゃねぇか

おぅ 上等上等

いいね コレならどこが欠けてたかなんてわかんねぇだろ

 

ん?

馬鹿言っちゃあいけねぇ

三日四日で外れちまうようなヤワな仕事しちゃあいねぇよ

三百年だって四百年だって ビクともしねぇさ

職人たぁ そういう仕事するモンよ

 

礼はいらねぇよ

昨日や今日のつきあいじゃねぇ

じいちゃんの代からの仲じゃあねぇか

 

そこまで言うんなら……そうさな

たまぁによ かわら版撒くときに

手伝ってくんねぇか?

うちの看板娘としてよ

 

何たって嬢ちゃんの笑顔は天下一品だからよ

かわら版の売り上げも倍増間違いなしってなモンだ

 

ひとつ よろしく頼むぜ!

 

 

 

辰2006/12/16 15:58お玉さんの「河童」から始まった物語。
書きたいものはてんこ盛りなんだけれど、ナカナカ後が続かない。。。

BOBOBOBOBOBO2006/12/16 22:28大川を溯って「イワナ」がいる所って地理的に無理があるような。
ストーリーとは直接関係無い話でスミマセン。

otama-nekootama-neko2006/12/16 23:03なつかしい!ここに移してくれたのですね。あの絵を描いた時、ちょっと特別な感じがしたのです。みんながあの子を気に入ってかわいがってくれました。そろそろ続編を書いてみようかなとおもいました。辰さん、ありがとう。

辰2006/12/16 23:25★BOBOBOさん。
ばはは〜! 確かに!
でも、あの当時は大川上流にもイワナがいた……ラシイ、いたんじゃないかな……いたとしたら嬉しいなぁ……。
鋭い突っ込みありがとうございます(笑)。

辰2006/12/16 23:26★お玉さん。
懐かしいっすよね〜。やっぱりお玉さんも続編書きたいんですね?
いいないいな、楽しみだ〜!

BOBOBOBOBOBO2006/12/18 22:24舞台や小道具のディテールにコダわる派なんで、
(例えカッパが出てくる話でも)スミマセン。

大川って隅田川ですよね?荒川まで溯ってさらにずっと上流の渓流に行かないとイワナはいません。今でも「ガングロ」が渋谷にいる、と信じている一地方人としもそこは譲れない所です。(笑)

辰2006/12/18 23:00★BOBOBOさん。
いえいえ〜。お気持ちようく判ります(笑)。
でも、書いてる時にここはイワナしかない! って言霊さまが言ったもんで(笑)。今後注意しますが、コレはこのままてぇコトでひとつご寛容のほどを(苦笑)。