私は毎日すべての事がだんだん良くなる

2007-04-05偽アマゾン撮影隊騒動記

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◆ 沖縄へ……? ◆

 

 西表のコーディネイターからはいい反応が返ってきた。『アゴ・アシ・マクラ』もバッチリである。機材の手配も済んだ。さて明後日は沖縄に向けて出発だ! という時に、嫌なニュースが耳に入ってきた。ANAとANKがストライキ突入というのである。

「うっそー!」

「とにかく予定通り羽田に集合しよう。飛ばないならそこで対策考えるしかないだろ」

 沖縄に向かうスタッフは、村田監督と助監督。撮影監督の斎藤さんとチーフアシスタント、セカンド。ステディカム・オペレイター二名。美術監督の藤田さん、主人公を演じる役者の石島さん、そして俺、の総勢十名。

『頼む、飛んでくれ!』という全員の思いは虚しく裏切られ、早朝羽田に集合した俺たちを待っていたのは、『出発未定』の文字の行列と右往左往する人々の群れ。膨大な機材を積み上げたカートを転がす俺たちは、いつも以上に邪魔っけな存在だったろう。クライアント対応のため東京に残る、小林・古田・蔦野の心配そうな顔はすでに脳裏から消えていた。

 俺は九州沖縄方面に飛ぶ便の全てにエントリーしなおした。キャンセル待ちにも突っ込み、後は待つだけだ。断片的に聞こえてくる情報によると、どうやらストは解決方向には向かっているらしい。しかし飛行機はエプロンにリベットで留められているかのように動き出す気配はない。他にやることもない俺は時々状況を小林に伝えるだけである。

 羽田でのスタンバイが三時間を越えようとしていた頃、公衆電話の向こうから小林の一回り大きな声が俺の耳に飛び込んできた。

「沖縄、台風来てるんだって!」

「台風? 何で? 五月だよ五月!」

「んな事言ったって来てるんだもん、台風。結構元気な奴が」

「ダメだよ、そんなの反則だよ! 何とかしてよ」

「んな事は台風に聞いてくれ!」

 ……と言われても、台風には眼こそあるが、耳も無ければ口も無い。とても言うことを聞いてくれそうもない。

 年間を通して一番天候が不安定なのは、実は梅雨時ではなく五月である。「五月晴れ」と言われるのは、気持ちよい晴れの日があまりないことから、貴重な日という意味合いが含まれているのである。しかし、よりによってこのタイミングで台風とは……。

 ストは回避された。しかし案の定、沖縄方面へのフライトは台風の影響で再開未定との放送が流れる。北行のボードは少しずつ繰り上がって行くが、沖縄便は微動だにしない。諦めて空港から引き返す人々もぼちぼち出始めている。俺はキャンセル待ちの状態を何度も確認しに行った。

「一便出るよ!」

 午後になって待望の那覇行きが飛ぶことになった。ラッキーな事に早朝からキャンセル待ちに突っ込んでいたおかげで、取りあえず六名分のシートをゲットできたのである。まずは撮影の準備が最優先されるので、演出部と撮影部を先に送り出すことになった。とにかく那覇まで行けばなんとかなるだろう。先発隊に那覇から先の行程確保について依頼し、合流の段取りを決める。携帯電話などまだ普及していない頃なので、連絡の拠点は KUSUBURIアドバタイジングのデスクに張り付いている小林を中心とすることとなった。

 暴風雨を伴う台風は西に逸れて行きつつあるらしい。飽きっぽい性格の台風なのか、急に発生し、早いスピードと強い勢力で北上したかと思うと、クルリと行き先を変えたようだ。

 しばらくの待機の後、次の那覇行きに残った四人が乗れることになった。とにかく「まずは沖縄」である。空港ロビーの床に根を張ろうとしていた腰を、俺たちはようやくの事で持ち上げた。