私は毎日すべての事がだんだん良くなる

2007-05-05偽アマゾン撮影隊騒動記

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◆ 何か忘れてないか……? ◆

 

「ダイナミックさに欠けるんだよ……」

と、村田さんが言ったのは、一通りの撮影予定をこなし、明日は東京へ帰るという晩だった。予算より前にスケジュールがギチギチのため、多少の難はあっても戻らなければならない。

 確かに、いかに西表がアマゾン風味だったとしても、アマゾンのあの途轍もない大きさと比較するのはあまりにも酷だ。アマゾンの中にいったい西表島は何個納まるのだろう?

 そこで、帰京後ライブラリーを探すこととなった。村田さんの欲しい画は、圧倒的に大量の水を押し出し続ける、世界最大の『イグアスの滝』とキャノピー(アマゾンの密林を覆う樹冠部)のエアリアル(空撮)だ。ライブラリーを使う場合、こちらが意図したアングルやキャメラワークは期待できない。そりゃそうだ。それを撮った連中は、そいつらが撮りたいアングルとキャメラワークを追求したのだから。まぁ、ここで悩んでもしょうがない。東京へ戻って監督がラッシュ編集を進めている間に、俺がライブラリーを虱潰しにあたることとなった。

「きっちりと探しますよ。そこだけ空けてラッシュ進めていてください」と、深く考えることもなく俺は監督に請け合った。欲しい尺(フィルムの長さの単位/フィルム映画の場合、一秒の映像は二十四コマのフィルムからできており、その二十四コマの長さがほぼ一フィート、つまり約一尺)は、それぞれ五秒程度。併せてたったの十秒程である。大したことはない。

 

(まだ何かが足りない……)と、一同がもやもやしているところに、誰かの小さな呟き声が突き刺さった。

「アサガオ……」

 どっひゃあ!

 そう、まだアサガオが撮れていないのだ。いつでもイケルから大丈夫と、みんな結構気楽に構えていたのだが、気が付いたらあれ以降アサガオの復活に出会えていないのである。あんなに当たり前に見えたアサガオが、『未知の植物の種』以上に遭遇困難なターゲットとして、俺たちの前に立ち塞がっていた。明日このまま東京に戻ったら、恐らくクランクアップまでに二度とアサガオと出会う事はないだろう。沖縄しかない。でもあれほど期待していた西表のアサガオは、台風が中国大陸方面への旅路に連れ出してしまい、そのまま帰ってくる様子がない。

 

 結局、全体スケジュールの遅れを最小限にするため、村田さんたちは先に東京に戻って予定通りに他のシーンの撮影準備とラッシュ編を行い、撮影部が残ってアサガオを「本島で探すだね」という事になった。

 俺は東京の小林に連絡を入れ進捗を伝え、「――ってな訳で、撮影部三人とサポートで俺が残ることになったから、申し訳ないけれどライブラリーの下調べヨロシク」と、普通では考えられないのだが、代理店の営業に向かって仕事をオーダーする。小林もそこは判っている。そこらのハンチクな野郎を動かすくらいなら、ブロンクスで鍛えられた自分が動いた方が、早くて確実だということを知っている。感謝しながら俺は返す手で、今度は那覇空港付近のホテルをリザーヴする。

「まぁ、とにかく那覇に行ってから考えよう」

 段取リングが終わると、ゴチャゴチャ考えずに安心してしまうのは何故だろう?

 

 

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