私は毎日すべての事がだんだん良くなる

2007-05-14偽アマゾン撮影隊騒動記

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◆ アプローズ!(拍手喝采)◆

 

 数時間後、まだ暗闇の中を俺たちは撮影機材や風除け兼反射板であるカポック(※三×六尺の発泡スチロール板)などを抱え、ホテル裏のアサガオ群生地に向かった。

 改めて主役を張れそうな蕾を探すと、可能な限りの風除けを施しキャメラをセットした。後は祈る思いで日の出を待つ。

 

 やがて群青色から紫に、そしてオレンジに変わって行く天然の照明をたっぷりと浴びた主役の蕾は、たった四人の観客を前にした天然のステージで、ゆっくりとゆっくりと生涯一度だけの最高の演技を披露し始めた。ゴクリ……と俺たちの喉が鳴る。

 

 ――ついに咲いた!

 

 小学生の頃、庭先で初めて咲いたアサガオを見た時以上に爽やかな感動の一瞬。朝露が煌めき、瑞々しくたおやかで、少し儚げにフルフルと揺れるアサガオの花は、素晴らしく美しかった。

(コイツ、自分が咲く場所と時間をちゃんとわきまえているんだな。あんな部屋でなんか咲きたくなかったんだな……)

 人の干渉を拒み、自然な状態での演技に拘った主役は、さすがに野趣たっぷりの『野アサガオ』そのものだったのである。結局彼女に対する演出はまったく不要だった。

 ただ一度のデビューステージを終えた彼女の演技はフィルムに収めた。あの僅かな時間の全てはフィルムのコマの中で、いつまでも生き続けることができるのだ。後は俺たちがたくさんの観客に向けてこの感動を発信してあげるだけ。

 映像制作の達成感はこんな時にも訪れる。四人の観客はそれぞれがバチンと手を叩きあうと、無言のまま機材の撤収にかかる。

 機材を抱え上げた俺たちは愛すべき役者を振り返った。緑の中で優しく揺れるその姿を忘れることはないだろう。

(今度は俺たちがきっちりといい仕事してあげるよ)

 そう誓った直後、俺の頭は東京で待つ次のステップへと一足先に帰っていった。

 

 

◆ アマゾン遙かなり ◆

 

 東京に戻ってからの撮影は順調だった。幸い天候にもずっと恵まれ、大きなアクシデントも無く着実に予定の撮影をこなしていくことができた。

 難航していたのはただひとつ、アマゾンのライブラリー映像だ。西表で考えていた時には、正直言ってこうまで苦しむことになろうとは思っていなかった。『イグアスの滝』もキャノピーのエアリアルもある事はあるのだ。しかし素材はノーマルのVTR。いくらプロがおさえた素材でもノーマルVTRでは解像度が低く、とてもハイビジョン作品で使うことはできない。小林に先行して問い合わせておいてもらった、期待のMHK、オニーOBK、IMAGENには無かった。当時はこの三社になければハイビジョンはほぼ諦め同然である。小林はさらにその先のフィルムライブラリーへのサーチを始めてくれていたが、はかばかしくない。

 邦映に『イグアスの滝』があると聞き、みんなで試写を見に行った。確かに『イグアスの滝』のフィルムだ。三十五ミリ、画質も申し分ない。いい感じで突っ込んで行くエアリアル、天気も最高だ。

 そこまでは完璧だ。ところが……

「あれは……何?」

『イグアスの滝』の大きなポイントである『悪魔の喉笛』という名の、グワッと切れ込んで一際水量が豊かな一角に突っ込んで行く、とても絵になるアングルのキャメラワークなのだが、その『悪魔の喉笛』に張り出している岩場の上に何かある。空中のキャメラがそこに滑っていく。

「うわっ!」

 一同、思わず仰け反った。

 そこには、小さな寺のお堂のような建物が建っている。しかもどう見ても日本の寺だ。

「何あれ? 何で? どうしてあんなもんがあそこにあるの?」

 それは邦映配給の邦画の素材だった。ある鄙びた村が妖怪の呪いで全滅し、陥没した大穴に川の水がどうと流れ込んでいる、というシーンだったのである。そいつらは、そのシーンを撮るために、わざわざ地球の真裏の『イグアスの滝』に、小さな古びた寺を再現していたのである……あっぱれ! 感服つかまつった!

 しかし、しかしである。さすがにアマゾンシーンに日本の寺があったら洒落にもなんにもなりゃあしない。

 スリーアウト! チェンジ!

 

 その後、しまいには電話帳で名前が『アマゾン』というだけで電話をかけ、「そんな情報聞いたことないですか?」と尋ねる始末。電話の先は雑貨屋だった。

 そうこうするうちにクランクアップは迫ってくる。すべてのラッシュ編が終わるまでにアマゾン素材を入手しないと間に合わない。俺と小林は顔を見合わせた。小林の諦め顔がニヤリに変わるまで、そう時間はかからなかった。俺の表情も同じだったはずだ。こういう時の俺たちの意気はピッタリである。まったく同じ事を考えていた。

「タッちゃん、これは仕方ないよなぁ」ニヤリ……。

「まぁねぇ、これだけ探したからねぇ。さすがにもうここいらには無いからねぇ」ニヤリ……。

「今からじゃ凄く大変だけど、やっぱり後はあそこしか……」ニヤニヤ。

「選択の余地なしでしょ。凄く大変だけど、誰かが犠牲にならないと……」ニヤニヤ。

「で、スケジュールと予算はどうよ?」

「まっかせなさーい!」

「じゃあ、決まりかな? 凄く大変で仕方ないけどね」言いながら小林はニコニコである。

 俺はその場で電話を引き寄せると、『0011-01-……』とプッシュし始めた。相手はロスアンジェルスの『THEOREM PRODUCTIONS, Inc.』。以前から撮影関係でアメリカに行った際には、いろいろとお世話になっているコーディネイト会社だ。知識もネットワークも豊富、フットワークも良い。ヘッドの黒岩さんからは快い返答が返ってきた。いくつかの心当たりに問い合わせてくれるとの事。

 早速俺たちは根回しを始めた。小林は制作管理の古田さんを巻き込んで、会社の上司とクライアントを。俺は蔦野さんを始めスタッフとの調整と、スケジュールや予算の確認。

 ロスアンジェルスへの「アゴ・アシ・マクラ」は当初予算のアローアンスの中でカバーできる。スケジュールはしかし、まったく猶予なし。明日にでもロスアンジェルスから「ある」という返事を貰って、すぐ飛び出すような勢いで動かないと間に合わない。取りあえず、予想出発日のロスアンジェルス便をキープしておく。

 

 翌朝、KUSUBURIアドバタイジングに顔を出すと、THEOREMの黒岩さんからファクスが届いていた。こちらが探しているモノに近そうな素材を保有しているライブラリー数社と、アーカイヴネームのリストだ。○や△、×がマークされている。大丈夫と信じてはいたが、実際に素材リストを見ると一安心である。これだけあれば何とかなるだろう。俺と小林は諸々の確認を手早く澄ませると、アーカイヴを確認するためのスケジュールを立ててくれるよう、黒岩さんに依頼した。黒岩さんからは、まるで用意してあったかのように折り返しファクスが届いた。六社のプレヴューがアレンジしてある。

「あれ? タッちゃん、これどーゆーこと?」

 ロスアンジェルスに到着する時間は現地時間で十四時過ぎである。黒岩さんから送られたリストは、その当日、二社回るようになっていた。

「すげーなぁ、着いたその足でいきなりっすかぁ……」

 

 

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